省エネルギー

戦略的省エネルギー技術革新プログラム

単一面光源と新しい放熱システムで省エネ・高輝度・大光量のLED照明を実現

四国計測工業株式会社

取材: September 2018

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省エネルギー

戦略的省エネルギー技術革新プログラム

単一面光源と新しい放熱システムで省エネ・高輝度・大光量のLED照明を実現

四国計測工業株式会社

取材: September 2018

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新時代のエコで強力な照明を開発する

近年、省エネルギーの推進がますます求められるようになっています。また、水銀が環境に与える影響が懸念される中、高天井照明における高輝度放電(HID)ランプを、エネルギー的にも環境的にも利点の大きいLEDへと置き換えることが急務となっています。しかし、発熱密度の高いLEDを高出力化のため集積する場合、発光部が高温になるために寿命や発光効率を十分に維持するのが難しいこと、さらにLEDは拡散光で遠距離照射に十分な明るさが得にくいという課題を抱え、大型のLED照明の開発は進まないままでした。そうした背景の中、四国計測工業株式会社は、NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」で高輝度と大光量を確保したLED照明の開発を実施。2014年、「MIRACH-LED®(ミラクル)」シリーズ(高天井照明および投光器)を製品化しました。この高天井照明、投光器は、高演色(自然光が当たった色の再現性を示す指標)かつ、HIDランプと同等の照度を確保しつつ、それぞれ投入電力の66%、56%の削減を達成、大幅な省エネルギーを実現しました。また、本プロジェクト開始後の2013年に「水銀に関する水俣条約」が採択され、実際に高圧水銀ランプの使用が制限されることになった結果、本製品の開発はさらに大きな意味を持つようになったと言えます。


震災をきっかけに、開発が加速化

1993年に青色LEDが登場したことにより、それを利用した白色LEDが誕生し、その後、LEDによる照明が広く使われるようになりました。半導体そのものが発光するLEDは、従来の照明に比べて圧倒的に高効率で長寿命であることが特徴です。

ただし大光量のLED照明は、発熱によって発光効率が下がって十分な輝度が得られないことや熱が周囲の樹脂などを劣化させるといった課題があり、室内の高温環境下や20m超の高天井、200m超の遠距離照射が必要な建設現場やゴルフ練習場といった場での利用に適した製品は誕生していませんでした。

こうした中、四国計測工業がLED事業に着手したのは2009年のことでした。同社はそれまで、計測や制御を軸とするエレクトロニクス技術を活用した事業を中心に展開してきましたが、親会社である四国電力株式会社から、原子力発電所の白熱灯ランプをできるだけ長寿命のLEDに置き換えたいという要望を受けたことをきっかけにLED事業をスタートさせました。

四国計測工業は、四国電力の要求を満たす長寿命の白熱灯型LEDランプを開発・製造して2010~2011年ごろには製品化。ところが、それをまさに各電力会社に販売し始める段階で、東日本大震災が起きました。原子力発電所が全てストップし、同社の計画も止まりました。

その一方、震災後、省エネに対する意識は高まり、その時期を境に国内のLED需要は一気に高まります。そこで、四国計測工業は、LED事業を再スタートすることに決めました。目標としたのは、製品として“世の中にない超高輝度・大光量のLED照明”を開発すること。そのために技術的にクリアしなければならない課題が大きく2点ありました。それは高出力・大光量のLED光源の開発と、その光源の特性を維持できる放熱システムを作り上げることでした。

四国計測工業は、LEDチップを基板に並べて全体をまとめて単一光源とするCOB(Chip on Board)の開発に取り組みます。実装面積を節約できてより多くのチップを配置できるなどの点から、高出力・大光量に適しています(図1、写真1)。

図1 COB基板の断面構造(資料提供:四国計測工業)

写真1 本プロジェクトで開発された高出力COBモジュール(円形部分)

講演会での出会いが新たなCOBを生み出す突破口に

超高輝度・大光量を実現するため四国計測工業が目標としたCOBの出力は600W。しかし当時、COBは、大きくても100W程度の物しかありませんでした。出力が大きいと十分な放熱ができないからです。それだけ大きな出力の物をいったいどうやって実現できるのか。社内の開発メンバーが頭を悩ます中、同社は重要な出会いに恵まれました。COB開発をリードした四国計測工業事業開発部次長の村上昭二さんは話します。

「毎年高松で企画されているテクノポリスという講演会があるのですが、2011年、講師として登壇されたのは元九州工業大学教授で株式会社STEQ代表取締役の石原政道さんという半導体の専門家でした。石原さんはちょうど私たちが求めていたCOBを作る技術をお持ちの方で、その場で当社の役員が話し、一緒に新しいCOBを開発しようということになりました」(村上さん)

石原さんは、COBの基板に銅板を採用していました。銅板は金属の中でも熱伝導率が高いため、熱を逃がすのには有利です。しかし、光を反射しないため、それまでLEDの基板には不向きとされてきましたが、銅板の表面に白い塗料をコーティング剤として塗ることで、銅の高い熱伝導率を生かしながら、光も反射できるという仕組みを考案していました。その技術を製品化まで持っていくことが、四国計測工業のCOB開発のミッションとなりました。

基板にヒートパイプを利用した新しい放熱システム

そして、製品化で必要とされる放熱を実現するためには、新しいCOB開発だけでは十分ではありません。COBで発生し、基板を通じて移動する熱を空気中に逃がすために、ヒートシンク(放熱フィン)を利用した高効率の放熱システムの開発も不可欠でした(図2)。

この任務に就いた四国計測工業研究開発課の福田賢司さんの最初の仕事は、鹿児島大学工学部助教の水田敬さんに会うことでした。石原さんに「熱のことなら水田先生」と紹介され、ヒートシンクの設計と放熱のシミュレーションを依頼することになったためです。

「鹿児島でまず見せてもらったのが、FGHP(Fine Grid Heat Pipe)と呼ばれる熱伝導板でした。中に液体を閉じ込めて、それが熱せられると気化して管内を移動します。そして冷たい部分で液化して元の場所に戻るということを繰り返して熱を移動させる仕組みです」(福田さん)

水田さんは、2012年に漁船用の高輝度・小型LED水中照明の開発に成功しています。FGHPを用いることで、LEDの基板上の熱の集中の問題を解決したのです。ちなみに水田さんのこの開発は、別のNEDOのプロジェクトで実施したものでした。

一方、今回の超高輝度・大光量LED照明のCOB基板には、銅板の代わりに銅製のFGHPを使っています(写真2)。FGHPによってより効率的に熱を移動させ、かつ、高効率なヒートシンクを組み合わせて、これまでにない冷却性能を持った放熱システムを目指しました。

図2 開発するLED照明の概略(資料提供:四国計測工業)

写真2 FGHPは、上板、中板、下板の3枚の銅板から成る。中板部分に、蒸気路と呼ばれるパイプと、ウィックと呼ばれる毛細管流路がある(写真提供:四国計測工業)

写真3 それぞれ銅板(左)とFGHP(右)が使われたCOBを断面方向から見たところ。FGHPが積層構造になっているのが分かる

写真4 銅基板(左)とFGHP基板(右)の放熱性評価。FGHPの方が格段に温度を低く保つことができる(写真提供:四国計測工業)


無機塗料を、ナノ粒子化でFGHPに接着させる

COBと放熱システムの方向性が明確になってきた頃に、NEDOプロジェクトに申請することが決まりました。そして2012年度のNEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に「超高輝度・大光量LED照明の開発」が採択され、COB製造のための各装置(写真5、写真7)の導入が実現したことにより、製品完成に向けた工程が動き出しました。

実際にモノを作り始めると、解決すべき技術的課題が浮き彫りになっていきました。

COBについてはまず、銅製のFGHPに白い塗料を塗る上で難しさに直面しました。今回用いるのは無機塗料です。無機塗料は、ただ粉を押し固めたような状態のため、銅の表面にくっ付けてもすぐに剥がれ落ちてしまいます。それでも一般の塗料に比べて光による劣化や変色が起きにくく、経年によっても表面の反射率が落ちません。そのため、長寿命を実現するには無機塗料を使うことが不可欠であり、それをどうやって塗ればよいかを考えなければなりませんでした。

「塗料をナノ粒子にして試してみることになりました。粒を細かくすれば表面に付きやすくなると考えたためです。ただし、単純に粒子を小さくすればよいわけではありません。細かさを何段階かに分けて配合するとより付きやすくなるので、その最適な配合比を見つけるべく試行錯誤を繰り返しました。そうしてようやく要求を満たす塗料ができました」(村上さん)

写真5 FGHP(手前左の円盤状の物)に無機塗料を塗布する様子。左写真の状態から白い塗料が塗られ、右写真の状態へ

塗料にナノ粒子を使う理由はもう一つあります。低い温度で塗料を焼結させるためです。白インクとして一般に使われるセラミックインクは700~800℃で焼結しますが、FGHPはその高温には耐えられません。そのため、塗料が200℃程度で焼結するよう、粒子をナノレベルのサイズにすることが必要なのです。また、塗布する塗料の厚さも精密に設計しました。放熱をよくするためには薄い方が好ましいものの、薄すぎると光が透過して反射しません。また電気的には絶縁膜としての役割を考えれば、ある程度の厚さが必要です。

それらの条件を全て満たすように、無機塗料そのものとその塗り方が決められました。

金属配線と特許の問題を乗り越えて、COBが完成へ

こうして銅製のFGHP上に白い塗料が塗られて「無機白色絶縁層」が形成されます。その上の70mm四方の領域に、2,000個以上のLEDチップが実装されます(出力600WのCOBの場合)。

LEDチップが実装された後、必要な金属配線をその周囲に設置します(写真6)が、ここでも新たな課題が発生しました。金属配線を「銀ペースト」を使って作ろうとしましたが、それが容易ではなかったのです。

「塗料を200℃程度で焼結させるためには、銀ペーストもナノ粒子でなければならないのは分かっていたので、まずは市販の銀ナノ粒子のペーストを試しましたが、うまくいきませんでした。一般にナノ粒子のペーストには、粒子を均一に分散させるための分散剤が入っているのですが、この分散剤が白い塗料の上にシミを作ることが分かり、市販品は使えませんでした。そこで、同じ四国にある材料メーカーに相談したところ、まさに私たちが必要としていた銀ナノ粒子のペーストを共同で開発してくれることになり、解決の糸口がつかめました」(村上さん)

試行錯誤を一年近く重ねた結果、ようやく求める銀ペーストが完成しました。
金属配線もできたことで、技術的な課題はこれでほぼ解決。あとは図1のように、チップ全体に蛍光体を混ぜた封止樹脂をかぶせればCOBは完成です。

ところが、技術的な課題ではない別の問題が残っていました。蛍光体に関わる特許の問題です。

白い光は、青いLEDを黄色い蛍光体に透過させることで作れるのですが、その方法が他社に特許を取られていて使えないことが分かったのです。しかし村上さんらは特許についても丹念に勉強し、解決策を見つけ出します。

「ある化学メーカーが、緑と赤を混ぜた蛍光体に青色のLEDを当てることで白色を作るという技術を持っていました。これならば使ってよいと言われました。多少コストは高くなるのですが、演色性Raが80(Ra100は、自然光が当たったときと同様の色を再現していることを意味する)と高く仕上げられることも分かり、この技術を使用できたことで、特許の問題も無事にクリアすることができました」(村上さん)

そうしてついに、COBにかかわる全ての問題が解決され、かつてない大きさと能力を持ったLEDの光源が完成しました。

写真6 COB基板上に設置されたLEDチップ。70mm四方に2,000個以上が並び、その一つひとつが金属配線でつながれる

写真7 白い塗料が塗られたCOB基板上にLEDチップを一つひとつ高速で設置する装置。その際、厚みをできるだけ薄くして熱抵抗を下げるために、チップは基板に押し込まれる

写真8 完成したCOB

ダイカスト、そしてコストダウンを実現しての製品化

一方、ヒートシンクは、鹿児島大学の水田さんのシミュレーションによって理想的な形状が探られながら、設計が進められていきました。ただ、成形上の制約のため、設計を現実の形にすることが容易ではありませんでした。

「シミュレーションの結果から理想とされた形状は、張り出しが大きく、ダイカストの金型から取り出せないだろうと言われました。そこで試作段階では、砂などで型を作り、毎回、型を崩して取り出していましたが、量産のためには金型で製作する必要がありました。また、材料として熱伝導の良い特殊なアルミを使いたかったこともあり、国内外のダイカスト会社に数多くあたって、苦労の末ようやく製作してくれるところを見つけることができました」(福田さん)

ヒートシンクは、細いフィンを多く持っているほど放熱効率は上がるものの、金型から抜く工程を考えると、あまり細くすることもできません。抜く際に必要な厚さと放熱効率の両方を考慮してシミュレーションを重ねていきます。そうして徐々に、最適な設計へと近づいていきました(図3)。

COBと放熱システム。その両者によって製品の姿が出来上がっていきますが、完成のためには電源などの周辺部分も詰めていかなければなりません。その部分を決め、コストも含めた製品として仕上げを考えていくのが、四国計測工業産業システム部次長の矢島裕史さんの役割でした。

「最初に形ができたころは、原価が目標販売価格の倍ぐらいになっていました。それをなんとか目標に近づけるために、変更を積み重ねていきました。結局、光源とヒートシンク以外はほとんど全て、初期の設計からは変更しています。例えばリフレクター(反射板)は当初、内側はアルミの真空蒸着、外側にカバーをという二重構造で高価な物でしたが、機能をできるだけ落とさずに工夫を重ね、結局当初の3分の1程度にまでコストを落としました。そのような積み重ねによって、目標とする価格に近づけることができました」(矢島さん) 

図3 ヒートシンクの熱解析シミュレーション(資料提供:四国計測工業)

写真9 高効率ヒートシンクの外観 (写真提供:四国計測工業)

かつてない物の開発を目指す上でNEDOの採択が自信に

2014年、NEDOプロジェクト終了後、高輝度・大光量のLED照明は「MIRACH-LED®(ミラクル)」シリーズとして発売されました。これまでになかった大出力のLED照明をわずか2年ほどの開発期間で完成させたことは、業界内でも驚きをもって迎えられました。

「東京で行われた展示会で初めてお披露目した際には、LED関連業者がたくさん視察に訪れました。COBが通常よりも大幅に大きく、単一光源で構成されて形状も違ったために、皆とても驚かれていたのが印象的でした。会場の高い天井に各社が上向きに照明をつけていたのですが、弊社のブースの真上だけが非常に明るくて目立っていました。やった!と思いましたね」(村上さん)

リリース後、最初にまとまって出荷されたのは大規模ダム工事の現場でした。夜間でも工事を続けなればならない5、6か所ほどの現場に100灯ずつ設置され、昼間のような明るさを提供しています。そのダムの周辺には、天然記念物であるクマタカが生息していましたが、LED光は直進性が高いため、生態系を壊すことが無いということも導入を後押ししたようです。

他にも、ゴルフ練習場では、夜間でも300ヤード先の球の行方が確認できることが強みとなって導入され、また、四国計測工業の地元である香川県・丸亀城のライトアップにも使用されています。

写真10 八ッ場ダム工事現場での利用(写真提供:四国計測工業)

写真11 丸亀城のライトアップ(写真提供:四国計測工業)

「開発を始める前は不安もありました。しかしNEDOプロジェクトとして審査を受けた上で採択してもらえたことが大きな自信になりました。開発のための装置をそろえられたことがもちろん大きかったのですが、当時では考えられないような高い目標を掲げて、これまでにない物を作ろうとしている中、この方向でいいんだ、よしやろう、と思えるモチベーションをもらえたことも、NEDOプロジェクトとして事業を進められたことの大きな意味だと感じています」(矢島さん)


LED需要の鈍化が予測される中、新たな道を切り開くために

2018年2月、「MIRACH-LED®」は「平成29年度省エネ大賞(製品・ビジネスモデル部門)」で、「省エネルギーセンター会長賞」を受賞しました。従来のHID照明に対してはもちろんのこと、一般的なLED照明と比べてもエネルギー消費効率が高く、強い光で遠くを明るく照らせる点が評価されたのです。

「MIRACH-LED®」は製品として高い評価を得られたものの、現在のLEDを取り巻く状況は決して順風満帆とは言えません。LEDは長寿命ゆえ、徐々に販売が鈍化していき、今後数年で頭打ちになるという予測も聞かれます。

「2013年10月に『水銀に関する水俣条約』が採択され、高圧水銀ランプの使用が制限されたこともあり、水銀灯や白熱灯を代替するというニーズは引き続きあると考えていますが、LEDは長寿命ゆえ、一通り行き渡れば需要が落ち込むことが予想されます。他社との競争も厳しさを増しています。私たちの製品は、他社の同等の出力の照明に対して、軽くてコンパクト、そして高い信頼性という点で強みがあり、特に600Wクラスの大出力の製品では優位な状態にあると言えます。しかし実際の販売は価格が左右する面が大きいため、大光量を必要とする現場など以外では、コスト面での難しさがあります。私たちも当然ますますのコストダウンを目指してはいるものの、今後は、新しい用途、販路を見つけていくことも重要になると考えています」(矢島さん)

新しい用途として、実用化が見込まれている分野は現在主に2つあります。その一つが、水の殺菌装置としての利用です。

写真12 平成29年度省エネ大賞(製品・ビジネスモデル部門) 省エネルギーセンター会長賞受賞のトロフィー

「現在水の殺菌装置として主に水銀ランプが使われていますが、波長が200~250nmほどの深紫外光に、より効果的に水を殺菌できる能力があることが分かってきました。現在、家電メーカーなどから、深紫外LEDによる水の殺菌装置が製品化されています。ただしいずれも出力が十分ではありません。そのため、本プロジェクトで開発したような、COBに高密度実装してFGHPを用いる製品をこの目的で開発すれば、業界的にはかなりインパクトがある物になると考えています。2019年か20年には製品化を実現させたいです」(村上さん)

そしてもう一つが、原子力発電所での活用です。「MIRACH-LED®」に使用されたナノ粒子のセラミックインクも銀ペーストも無機材料であり、放射線環境下でも劣化が少ないため、この用途には適しています。現在すでに、使用済み燃料プールを照らす水中照明と、格納容器内で使用する天井照明の開発が進んでいます。福島の廃炉作業などの用途へも生かされることが期待されます。

加えて、舞台、スタジアム、ハウス栽培などさまざまな現場への引き合いがあるとのことですが、中でもとりわけ興味深い導入事例が、自動車の衝突実験場です。導入された投光器は出力1,200W、LEDチップ3,000個以上のCOBが使われています。その規模になると、ヒートシンクでの自然空冷では放熱が難しかったものの、その後、信頼性の高いファンが出てきたため、そのファンで強制空冷すれば十分放熱できることが分かり 、実際に採用されることになりました。

写真13 耐放射線LED水中照明(写真提供:四国計測工業)

「衝突実験は、高速カメラで撮影するため、4万ルクスもの安定した明るさが必要です。そのため普通はハロゲンライトを数百灯と照らすのですが、赤外線を放出するので非常に熱い。実験用のダミー人形は非常に高価な物らしいのですが、温度が上がると変質してしまうため、照らしてすぐに撮影しなければならず、失敗も許されません。そこで、光量は同等ながら温度が上昇しない大出力LEDに替えたい、その上、天井から吊るせる軽い物ということで探した結果、弊社製品にたどり着いたとのことで、導入に際してとても喜んでもらえました」(村上さん)

LEDはろうそく、電球、蛍光灯に続く「第4世代の明かり」として現代の生活になくてはならない物となっています。施設が広大になるほど照明がエネルギー消費に占める割合も大きくなります。高出力な単一面光源と無機材料を特徴とする高輝度・大光量LED照明を必要としている現場は、まだまだ多くありそうです。四国計測工業の新たな挑戦は、これからも続きます。

開発者の横顔

人の生活に直接役立つモノ作りを、これからも

村上さんは、本プロジェクトにおいて、COB基板の開発をリードしました。これまでになかった大出力のLEDモジュールの心臓部分の開発を担当する中で、さまざまな試行錯誤を繰り返し、複数の壁を乗り越えてきました。

「特に特許については猛勉強しました。関連する何百件という特許を読み、突破口が見つかったときには、ほっとして、うれしかったです。LED照明の開発を始めたころから、地球温暖化対策のために省エネルギーを実現するんだという意識を持って取り組んできましたが、お客様からは電気代が削減できるという点ばかりが着目されることに正直戸惑いがありました。しかし、原発や浄水場などでの利用の可能性が広がるうちに、人の生活に直接役に立つようなモノを作っているということを実感できるようになりました。これからもそうした意識を大切にして、一層モチベーションを高めて開発に取り組んでいきたいです」

四国計測工業株式会社
経営戦略本部 事業開発部 次長
村上 昭二 さん

一丸となってモノを生み出す楽しさを実感

福田さんは元々電気電子が専門で、かつてはプリント基板を作っていました。そこからこのプロジェクトが始まって、ヒートシンクを含めた熱回り、放熱システムの構築を担当することになりました。

「私はこのプロジェクトには、NEDOに申請する段階から関わらせてもらっています。当時、経営層も含めてメンバーの皆が、こういう物を作ろうと同じ方向を向いて一丸になっているのを感じました。そこから実際のモノを作り出し、量産してさまざまな現場で使われるまでに至れたことが、やはり非常に楽しく、研究段階から製品化まで、一貫してかかわった経験は貴重です。これからも、今回のように、次の『我が子』と呼べる製品を作っていくべく、新しい開発をどんどんやっていきたいなと思っています」

四国計測工業株式会社
経営戦略本部 事業開発部 研究開発課
福田 賢司 さん

『四国計測の製品を使いたい』と思い続けてもらえるように

矢島さんは、電源その他、照明を製品として完成させるための周辺部分全体を担当しました。出来上がったLED光源や放熱システムを一つにまとめ、コスト面の考慮も含めて、仕上げていく役割です。

「コスト面は脇に置いて試作として作られた物を、いかにして製品として販売できる物にするか。そのための工夫が大変でした。LEDは、2020年を過ぎたあたりで一通り行き渡り、販売は頭打ちになると言われていますが、その頃には、初期に導入された製品の基盤が故障したり寿命がきたりということが今以上に出てくるはずです。そうしたときに、『今度は四国計測の製品を使いたい』『次も四国計測の製品を使いたい』と言ってもらえるような、安心と信頼を感じてもらえるモノ作りを、これからも目指していきたいです」

四国計測工業株式会社
製造事業本部 計器・産業事業部 産業システム部 次長
矢島 裕史 さん

なるほど基礎知識

LED照明の原理と構造

LEDはLight Emitting Diodeの略で「発光ダイオード」とも呼ばれます。特定の方向に電圧をかけると発光する半導体の一種です。

半導体にはp型とn型があり、その両者が組み合わさってできるpn接合の半導体がLEDの発光を担います。p型は正孔(電子が不足して正の電荷を帯びている部分)を持ち、n型は余分な電子を持っています。pn接合の半導体に電圧(順方向)をかけると、正孔と電子が共に移動してぶつかって結合します(再結合)。そのときに、余分なエネルギーが放出されて光となり、発光するのです。発せられる光の波長、すなわち色は、半導体の材料によって決まります。現在は、赤色、緑色、青色の3色(光の3原色)のLEDがそろっているため、あらゆる色をLEDで表現できます。

また、LED照明の最大の特徴である長寿命は、例えば白熱電球の場合はフィラメントという細い金属状の部材が発光するのに対して、LEDは半導体そのものが発光するため、発光する部材が消耗することが抑えられることで実現しています。ただし、半導体は高温では劣化し、またそれを封止する樹脂が熱によって劣化・消耗するために、外に出る光が徐々に減っていき、いずれ寿命が訪れます。

そのため、LED照明ができるだけ長寿命であるためには、特に出力の大きい物の場合、いかにして放熱するかが重要になります。ファンを使って強制的に空冷することも可能ですが、ファンの故障や寿命によって問題が生じる可能性を考慮して、四国計測工業は、できる限り自然空冷にこだわり、ヒートシンクを利用した高性能な放熱システムを開発してきました。

明るさをより追求しつつ、寿命を長くするために最適な放熱方法を考える。今回のプロジェクトでの最大の課題となった2点は、まさにLEDの本質的な部分であると言えるでしょう。

写真14 青・赤・緑の三色のLED

NEDOの役割

「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」
(2012~2021年度)

(NEDO内担当部署:省エネルギー部)

日本の最終エネルギー消費のうち、民生部門は全体の3割を占めています。東日本大震災以後は、省エネルギー対策などの進展により減少傾向にありますが、引き続き効率的な省エネルギー技術の開発や実用化が望まれる状況にあります。

NEDOは、経済成長と両立する持続可能な省エネルギーの実現を目指し、省エネルギー技術革新に向けた取組を戦略的に推進しています。「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」は、日本における省エネルギー型経済社会の構築や産業技術力の強化に寄与することを目的とし、事業化までシームレスに技術開発を支援するプロジェクトです。

四国計測工業株式会社は、既に企業や大学などが有している技術やノウハウなどをベースとした技術開発を行う、実用化開発フェーズに参画し、演色性Raが80以上の高演色型の高輝度・大光量のLED照明の開発に成功し、実用化を達成しました。

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