NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th102 NEDO 40年史 海洋エネルギー歴史と背景実用化に向けた技術開発 海洋は、地球の自転や月・太陽の引力、風などの力によって、絶えず海水の移動や運動が起きており、膨大なエネルギーを有しています。このエネルギーを利用した海洋エネルギー発電は、周辺海域の波力・潮流エネルギーのポテンシャルに恵まれた欧米を中心に、技術開発が進められてきました。 一方、日本では、オイルショックを契機に、石油・天然ガスの代替エネルギーとして海洋エネルギー、特に波力発電への期待が高まり、1970年代に実証試験がいくつか行われました。しかし、石油価格の沈静化とともに研究開発は先細りとなり、その後日本では大規模な実証プロジェクトは行われていませんでした。 政策的には、「海洋基本計画」注1)や「再生可能エネルギー導入拡大に向けた関係府省庁連携アクションプラン」注2)、「エネルギー基本計画」注3)において、技術開発の推進と実用化の見通しが高い技術を見極めながら、経済性の改善や信頼性の向上などの技術開発、実証試験と環境整備に取り組むとされており、海洋エネルギー発電の早期実用化に向けた取り組みが期待されています。 このような状況の中NEDOは、2009年度から海洋エネルギーに関する調査を行い、2011年度から「海洋エネルギー技術研究開発」を立ち上げ、2017年度までの7年間にわたり海洋エネルギー発電の開発に取り組んできました。 これらの成果を踏まえ、現在NEDOは、さらなる実用化に向けた取り組みとして、実海域における長期実証研究を推進しています。  最近10年の主なプロジェクト❖ 海洋エネルギー発電システム実証研究 [ 2011〜2017年度 ] 海洋エネルギー発電システムの実証試験を実海域で実施し、事業化時の試算で、発電コスト40円/kWh以下を見通せるシステムを確立することを目標にしています。発電システムを設置するための設計、施工・設置方法の検討、地元関係者との合意形成や設置に必要な許認可などの取得を行い、発電性能やコストなどの検証を行いました。注1)「第2期海洋基本計画」(2013年4月閣議決定)では、海洋再生可能エネルギーの利用促進として具体的に、海洋エネルギーを活用した発電技術として、40円/kWhの達成を目標とする実機を開発するなど、多角的に技術研究開発を実施するとされている。「第3期海洋基本計画」(2018年5月閣議決定)では、これまでの研究開発の成果を踏まえて、実用化の見通しが高い技術を見極めながら、電力供給コストが高い離島において、長期連続運転に係る実証研究に取り組みつつ、離島振興策との連携を図るとされている注2)2017年4月11日に再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議が公表した計画で、関係府省庁が連携して、今後重点的に取り組むべき海洋エネルギー発電技術の有望分野における課題解決に向けて、技術開発の推進を図るとされている注3)「第4次エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)、「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月閣議決定)では、「取り組むべき技術課題」の中で、波力・潮流等の海洋エネルギーは、低コスト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発等を重点的に推進するとされている図16◉ 空気タービン式波力発電の外観提供:エム・エム ブリッジ

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