NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th104 NEDO 40年史 を備え、実用レベルに達していることを示すことを、最終目標としています。 この中で、実証機の発電特性、施工・設置方法、塩害・生物付着対策技術、遠隔監視システムなどの性能や環境影響などを検証するとともに、発電コスト算出に資するデータを収集し、離島電源としての実用性などを見極めようとしています。現状と課題水槽試験から実海域試験へ 海洋エネルギー発電については、まだ世界的に研究開発もしくは実証研究の段階にあるといわれていますが、それは海洋エネルギーの実用化の難しさを表していることに他なりません。技術的な課題を克服し商用化の段階に持っていくには、水槽試験から実海域試験へと発電システムをスケールアップし、実海域試験では、単機から複数機へと発電能力を向上し、性能、信頼性、施工や運転保守などを検証し、各種技術を段階的に検証しながら確立する必要があります。 NEDOは海洋エネルギー発電の実証研究や要素技術開発などによって、いくつかの発電システムの基本性能や信頼性などを検証し、技術課題を克服する取り組みを進めてきましたが、それらを実用化、商用化するためには、さらにこれらのステップを繰り返し行い、信頼性を向上することが求められています。 また、日本の海洋エネルギーの利用推進に向けては、日本特有の気象や海象条件に適した発電システムの技術開発を行うことが不可欠であるとともに、電力コストが高い離島への電力供給など、離島振興策との連携や海域を利用する産業や地域の方々との調整や協調関係を醸成することも重要となります。今後と展望事業化に向けた基盤整備に寄与 海洋エネルギー発電は、欧州を中心に発電システムの複数機配列や大型化などの検討が進められており、事業化前の段階にあるといわれています。 NEDOは、国内での海洋エネルギー発電の導入や、日本企業の産業競争力を強化するため、実証研究や要素技術開発などを実施してきました。特に、実海域での実証研究では、各々の海域での自然条件を考慮した設計・製作を行い、各種運転データの収集・分析、あるいは運転保守を通して様々なノウハウが蓄積されており、実用化への道が見えてきました。 今後、長期の実証研究を通して、連続運転に関する性能や信頼性の評価を行い、施工方法や運転保守技術などの技術課題の克服を目指すとともに、発電コストや環境影響評価などを検証する予定です。 さらに、世界的には国際標準の策定に向けた検討が進められていることから、日本の実海域試験から得られる各種データなどを活用した国際貢献も視野に入れ、海洋エネルギー発電の事業化に向けた基盤整備に寄与していきたいと考えています。図20◉ IHIの100kW級実証機「かいりゅう」提供:IHI

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