NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th108 NEDO 40年史 kWh)の寄与が期待されており、設備容量として602万~728万kWの導入が目標となっています。FIT制度で認定された設備がすべて稼働すれば目標達成は十分に可能ですが、再生可能エネルギー大量導入時代の調整力としても期待されるバイオマス発電を、買い取り期間終了後も健全に事業継続させていく必要があります。そのためには、発電コストの大部分を占める原料調達を含めて、システム全体を最適化していく努力が欠かせません。また、2018年に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」の中で、木質バイオマス発電と熱利用は、日本の貴重な森林を整備し、林業を活性化する役割を担うだけでなく、地域分散型、地産地消型のエネルギー源としての役割を果たすものと位置付けられています。そのため、低コスト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発などを重点的に推進していく必要性が高まっています。 バイオジェット燃料製造技術は、経済産業省が2014年にとりまとめた「エネルギー関係技術開発ロードマップ」において、2030年頃の実用化を目標とする技術として位置づけられました。また、「科学技術イノベーション総合戦略2016」においても、バイオジェット燃料の研究開発は「重きを置くべき取組」として位置付けられ、2050年に向けた長期的視野に立って開発を推進していくことが重要です。さらに「第5次エネルギー基本計画」では、2050年までの温室効果ガス(GHG)80%削減の目標、エネルギー転換・脱炭素化への挑戦が掲げられたこととともに、CO2を炭素資源(カーボン)と捉える「カーボンリサイクル」の実現に対応すべくカーボンリサイクル技術ロードマップが2019年に策定されました。その一環としてのバイオジェット燃料の製造技術開発を進めることも求められています。今後と展望持続可能な循環型社会に貢献 バイオマスエネルギーは、電気、熱、燃料として幅広い用途があり、地産地消エネルギーとしても地域活性化への貢献が期待されます。その一方で、経済性の面ではまだまだ改善の余地が残されています。そのため、発電や熱利用については、導入補助や実証研究といった支援制度を継続しつつ、国内における導入普及を効果的に進めていく必要があります。 バイオジェット燃料については、航空機由来のGHG排出量の削減に向けて、世界の潮流を見越して製造技術の確立を目指しています。このように、大きな社会的意義や便益がありながらも、研究開発の成果が直ちに市場性と結び付かない公共性の高い事業については、今後もNEDOが主導的に関わっていくべき分野と考えています。市場の形成段階で地歩を固めていくには、副製品製造を組み合わせたカーボンリサイクル技術の確立なども視野に入ってきます。同時に、ライフサイクル全体でのGHG削減効果や供給安定性、食料競合の回避、生物多様性の保護といった持続可能性についても十分に配慮して導入・拡大を進めていくことも重要です。

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