NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  エネルギーシステム分野再生可能エネルギー技術 NEDO 40年史 109地熱歴史と背景地球内部の熱エネルギーを積極利用 地熱発電は、今から100年以上も前の1913年にイタリア・ラルデレロで商業発電を開始し、日本でもオイルショック以前の1966年に岩手県の松川地熱発電所が稼働しました。世界的に見ても、イタリア、ニュージーランド、米国に次ぐ4番目の地熱プロジェクトでした。地熱資源は火山周辺などに限定される偏在性という特徴がありますが、近年、地熱資源を有する米国、インドネシア、トルコ、ニュージーランド、ケニア、アイスランドなどでの地熱開発には目覚ましいものがあります。2018年時点では、世界の地熱総発電容量は12.6GWで、最近では年間約270 MWずつ増大しています。 NEDOは、1980年の設立当初から地熱事業に携わっており、地熱資源の調査として、「地熱開発促進調査」を実施しました。これは、1980~2010年度に全国の地熱資源が賦存すると推定される約70地域を対象にしました。こうした当時の事業の成果が多くの事業者に利用され、現在、新規地熱発電所の立地に大いに貢献しています。 また、これらの地熱資源調査に加え、技術開発事業においても1980~2002年度に、「地熱探査技術等検証調査」や「熱水利用発電プラント等開発」を実施しました。地熱探査技術、地熱井掘削技術、貯留層評価・貯留層管理技術、地熱増産システム(EGS)技術、地上設備・発電システム技術などの研究開発により、地熱開発の導入・促進に貢献しました。 その後、NEDOは地熱開発において一定の役割を果たしたとみて、開発事業を休止していました。しかし、2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の施行を機に、再びNEDOへの期待が高まり、2013年度から開発事業を再開しました。 最近10年の主なプロジェクト❖ 地熱発電技術研究開発 [ 2013〜2020年度 ] 地熱発電の利用促進を図ることを目指し、研究開発項目は「高効率発電システム」 「小規模バイナリー発電システム」 「環境保全対策」 「酸性熱水対策」 「IoT-AI適用技術」の5つから構成されます。このうち、環境保全対策技術では、環境影響評価で重要な課題となる冷却塔から蒸気とともに排出される硫化水素の拡散モデルを開発し、従来実施されている風洞実験による予測手法よりも費用と期間をそれぞれ半減するという成果を得られました。既に実際の環境影響評価手続きでも3地域に適用され、今後も多くの事業での適用が期待されます。❖ 超臨界地熱発電技術研究開発 [ 2018〜2020年度 ] 従来の開発深度よりも深部の高温度領域をターゲットとすることで、生産量を増大しようとする試みがいくつかの国で着手されています。既にアイスランドでは、2本の出典:JOGMEC図26◉ 松川地熱発電所(岩手県)出典:三菱マテリアル図28◉ 「地熱探査技術等検証調査」の成果(秋田県澄川地域での長期噴出試験、蒸気流量194t/hを記録)出典:IGAウェブサイト図27◉ 地熱発電設備容量の推移14.012.010.08.06.04.02.00.019401960198020002020(年)増加率年間約270MW(GW)

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