NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th110 NEDO 40年史 調査井を掘削し、そのうちの1本では噴気試験にも成功し、同技術の早期実用化の期待がもたれています。こうした動向を受け、NEDOでも2017年度から同技術の実現可能性調査に着手しました。現在、超臨界地熱資源の賦存状況を把握するためモデルフィールドを5地域選定し、資源量評価などの検討を実施しています。現状と課題2021年度以降の技術戦略を策定 地熱資源は、火山国である日本には豊富に存在する純国産エネルギーであり、発電だけではなく熱の多段階利用も可能であるという長所があります。しかし、開発リードタイムが長く、温泉地や自然公園内での開発において合意形成に時間を要するといった課題があり、その普及が遅れているのが現状です。 こうした状況の中で、2019年には国内では23年ぶりに秋田県で10MW以上の大規模発電所である山葵沢地熱発電所が運転開始するなど、少しずつ新規開発の動きもみられます。 一方、COP21(パリ協定の採択)以降、GHG削減に対する各国への要求レベルは高くなっています。その対応として「革新的環境イノベーション戦略」(内閣府、2020年1月統合イノベーション戦略推進会議決定)では、GHG排出量を削減するポテンシャル・インパクトが大きい有望な革新的技術として、エネルギー供給を含む5分野からなる16の技術課題と39テーマが抽出され、その中に「超臨界地熱発電の実現」が選定されました。 こうした動向を反映し、NEDOは2021年度以降の地熱技術戦略を立案しました。この中で、現状の課題を考慮し、地熱発電の導入拡大を図る上で重要となる技術開発目標としては、「資源量増大」、「発電原価低減化」、そして「環境・地域共生」の3つに集約されるとともに、長期的には次世代へ向けた取り組み(CO2対策、水素製造など)や日本で培った技術の海外展開も課題となることが整理されました。今後と展望超臨界地熱資源開発へ向けた着実な前進 「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月閣議決定)において、再生可能エネルギーの主力電源化と、それに向けた発電原価の低減化が求められています。その図29◉ 硫化水素拡散予測モデルの概要①数値モデルによる拡散予測計算のイメージ②数値モデル結果と風洞実験結果の比較(濃度分布)出典:電力中央研究所

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