NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  省エネルギー・環境分野省エネルギー技術 NEDO 40年史 121現状と課題実用化に向け計画的に成果を創出 2016~2020年度には「高温超電導実用化促進技術開発」を立ち上げ、送配電ケーブルと高磁場マグネットシステムを対象に高温超電導技術の実用化に向けた開発を行いました。送配電ケーブルでは、「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」で開発したケーブルシステムの安全性の確保や冷却システムの高効率化技術の開発を行いました。 また、超電導ケーブルを鉄道き電線へ適用すると、過密路線での回生率の向上と変電所の負荷平準化が期待できます。本プロジェクトでは要素技術である長距離冷却システムの開発を行い、宮崎にあるリニア実験線の跡地にキロメートル級のケーブルを敷設し、冷却性能の確認を行っています。 高磁場マグネットシステムの開発では、ヘリウム供給リスクへ対応しつつ小型高性能化により大きな市場創出などが期待される核磁気共鳴画像法(MRI)用高磁場マグネットの開発を行い、1/2サイズの3T高温超電導コイルを製作し、性能確認を実施しています。さらにそれを実現するための超電導線材の磁場特性の改善と生産性の向上、加えて超電導接続技術についても並行して開発を行っています。今後と展望省エネルギー加速のため低コスト化が急務 送配電ケーブルについては、製品化可能な技術レベルを確立しました。公共インフラに適用すると大幅な省エネルギーが見込めますが、巨額の投資が必要となるため、現時点では具体的な適用先は明確になっていません。一方で、昭和電線ケーブルシステム株式会社が開発した低コスト型ケーブルシステムは、民間工場などへの適用が期待されます。鉄道き電線については、現在実施中のプロジェクトで長距離冷却システムの技術が確立されると、過密路線への早期採用による省エネルギー効果が期待されます。MRIなどに用いられる超電導マグネットについては、高温超電導技術を適用することにより省エネルギーと高精細な撮像による高精度な解析が実現できることから、医療現場への普及が期待されます。 いずれの製品についても普及や競争力向上に向け、超電導線材や冷凍機の低コスト化が求められていることから、さらなる技術開発が必要です。統合するビスマス系高温超電導ケーブルシステムを構築しました。ここでは高温超電導ケーブル単体だけではなく、敷設、運転、保守を含めたトータルシステムの信頼性を実証するために、実系統に連系した実証試験を実施しました。これにより、高温超電導ケーブルのトータルシステムとしての総合的な信頼性を実証するとともに、革新的な高効率送電技術の開発・検証を行いました。図17◉ ケーブル端末(手前)と小型冷凍システム(後方)図18◉ ケーブル敷設状況(宮崎リニア実験線跡地)図16◉ 超電導ケーブルの敷設状況(旭変電所)端末部ジョイント部超電導敷設状況冷却システム図15◉ 三心一括型超電導ケーブル超電導体(4層)電気絶縁層(PPLP+LN2)断熱管超電導シールド(2層)フォーマ図19◉ 1/2サイズ3T高温超電導コイルアクティブシールドコイルメインコイル1,060mm1,260mm

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