NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  省エネルギー・環境分野省エネルギー技術 NEDO 40年史 125ました。 これらの取り組みを通じて未利用熱の排出実態や熱の利用実態が徐々に明らかとなってきたため、今後はこうした実態に対応できるような未利用熱の活用技術を開発、導入していくことが求められています。今後と展望今後の未利用熱の活用に向けて 「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」では、工場設備の排熱実態調査のほか、未利用熱の活用に向けた様々な研究開発を行っており、すでに数件の成果が実用化・事業化しています。例えば、本プロジェクトの中で、従来の吸収冷凍機の約2倍の性能を実現する「一重効用ダブルリフト吸収冷凍機」を開発し、後に、日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社が、本開発技術を適用した吸収冷凍機「DXS」として製品化し、ビルや工場に導入しています。さらに、同社は、産業部門における低温冷熱の需要に対応するため、本プロジェクトで開発した技術に、前述の1990年代のエコ・エネ都市プロジェクトにて開発した低温発生技術を組み合わせ、0℃ブライン取り出しに対応した大温度差熱回収・中低温発生吸収冷凍機「DXSL」を製品化しました。吸収冷凍機の技術は、市場環境の理由により一時は普及にブレーキがかかったものの、関係者の不断の努力によりこの状況を乗り越えて、長期的なエネルギー転換・低炭素化という世界共通の課題に対応する形で、新しい技術と融合して世に出ていくこととなりました。 パリ協定の採択以降、2050年までの温室効果ガスの大幅な排出削減に向けて、各国では未利用熱を活用する取り組みが活発に推進されています。NEDOは、国内の3E+S、さらに全世界でのクリーンエネルギーへの移行という大きな流れの中で、日本の未利用熱の活用技術が諸問題の解決に大きく貢献できると考えています。古くから研究開発の行われている本分野の技術が、未来の省エネルギーに向けたフロンティアとして、さらに革新することを大いに期待しています。図25◉ 製品化につながった一重効用ダブルリフト吸収冷凍機図23◉ 産業分野における業種別・温度帯別の未利用熱量(排ガス熱量)の全国推定値(化学、電力は右軸)図24◉ 産業分野における排ガス熱量の2000年推定値と2015年推定値の比較

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