NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  省エネルギー・環境分野環境・省資源技術 NEDO 40年史 133ル)が、回収したCO₂を有効利用するCCUと合わせてますます注目されるようになっています。2019年に経済産業省で策定された「カーボンリサイクル技術ロードマップ」では、カーボンリサイクルを通じた大気中へのCO2排出を抑制していく方針が示されています。さらに同年の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」は化石燃料の脱炭素化のために不可欠なイノベーションの実現の一つとしてCCUとカーボンリサイクルを明記しています。加えて、長期戦略に基づいて2020年に策定された「革新的環境イノベーション戦略」は、CO2の炭素資源としての再利用や化石燃料とCO2の回収・貯留の組み合わせは大きな削減効果が見込まれるとして、カーボンリサイクルとCCUS技術を重点領域の一つと位置付けています。 こうした状況から、CCUSおよびカーボンリサイクルの技術についての社会ニーズは高まっており、その実現に向けた取り組みは非常に重要であることが分かります。そして、それに応えるため、CCUSおよびカーボンリサイクルに関するNEDOの技術開発マネジメントの役割は、ますます重要になっていると言えます。 最近10年の主なプロジェクト >> CCSの実現可能性調査(FS)❖ 発電からCO2貯留までのトータルシステムのフィジビリティー・スタディー [ 2008〜2012年度 ]❖ 高効率石炭火力実現のための経済性評価 [ 2017年度 ] CCSの各要素技術であるCO2分離・回収・貯留に関する開発を個々に進めるだけでなく、日本に適したCO2分離・回収・貯留の一貫プロセスを構築することが必要です。CO2回収地とCO2貯留層の場所が離れていることが想定されるため、分離・回収後のCO2を回収規模に見合う貯留層の場所まで輸送することが求められます。そこでCO2輸送を含めたCCSのFSとコスト評価を実施しました。 最近10年の主なプロジェクト >> CCUS研究開発・実証関連事業❖ 苫小牧におけるCCS大規模実証試験 [ 2018〜2020年度 ] NEDOは、温室効果ガスの大幅削減に貢献するため、大規模CO2排出源からのCO2を低コストで分離・回収し、海底下の地中へ貯留する大規模な実証試験を行っています。年間10万t規模でのCO2分離・回収から地中へ圧入貯留する一貫システムとして実証運転を実施し、2019年11月にCO2累計圧入量30万tを達成しました。さらに、貯留したCO2のモニタリングや周辺海域への影響を確認する海洋環境調査、国内外の社会的受容性の醸成に向けた情報発信・収集活動も行っています。図16◉ 発電からCO2貯留までのトータルシステムFS全体概要・ガスタービンでの高濃度水素燃焼技術開発・CO2回収型次世代IGCC技術開発基盤技術地中貯留圧入井ポンプ&気化器貯槽設備輸送(船舶等)貯槽設備液化設備圧縮機CO2回収装置CO2CO2石炭ガス化(火力)発電所燃焼排ガス地中貯留輸 送分離・回収石炭ガス化

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