NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
139/288

Chapter 2  省エネルギー・環境分野環境・省資源技術 NEDO 40年史 137元剤であるコークスの一部を水素に代えることにより高炉からのCO2排出量を減少させる技術開発と、製鉄プロセスの未利用排熱を有効活用し発生したCO2を高効率で分離・回収する技術開発を推進しています。これまで、水素による鉄鉱石還元と高炉ガスからのCO2分離・回収などの要素技術開発(2008~2012年度)に基づき、12m3の試験高炉を主体とした水素還元とCO2分離・回収を統合したパイロットレベルの総合技術開発(2013~2017年度)を実施しました。 試験高炉は、高炉内の3次元的な流動、反応、伝熱現象を効率良く把握することが可能であり、試験高炉を活用し、高炉内の水素還元原理などの検証を進め、高炉のCO2排出量を10%削減可能であることを実証しました。さらに、試験高炉とCO2分離・回収設備(アルカリ反応液を使用した化学吸収法)との連動試験により、水素を活用した高炉のCO2排出削減操業が可能であることを明らかにしました。また、CO2分離・回収技術開発では、熱エネルギー消費量を大幅に低減させるとともに、吸収液の加熱温度を100℃以下に下げることに成功しました。開発したプロセスは、日鉄エンジニアリング株式会社の省エネ型二酸化炭素回収設備ESCAPⓇとして、2012年に商用化されました。 2018年度からは、試験高炉を活用し、操業条件の最適化によりCO2排出削減効果を最大化する取り組みを実施しています。 最近10年の主なプロジェクト >> フェロコークス技術の開発❖ 資源対応力強化のための革新的製銑プロセス要素技術開発事業 [ 2009〜2010年度 ] 「革新的製銑プロセスの先導的研究」(2006~2008年度)において、革新的塊成物(フェロコークス)の原理検証とプロセス検討を行い、その成果を踏まえ、資源対応力強化と革新的省エネルギー技術の確立を目的とし、フェロコークスの組成、構造条件の探索、フェロコークスの製造プロセスの開発およびフェロコークスによる高炉操業プロセスの開発を行いました。 本プロジェクトではフェロコークス生産規模30t/日のパイロットプラント(原料設備、混練・成型設備、乾留設備)をJFEスチール株式会社東日本製鉄所京浜地区へ設置しました。フェロコークスの連続製造とともに、高炉へ装入し、高炉シミュレーションモデルも活用することで、10%の省エネルギーポテンシャルを検証しました。❖ フェロコークス技術の開発(旧:フェロコークス活用製銑プロセス技術開発) [ 2017年度〜 ] 資源対応力強化のための革新的製銑プロセス要素技術の開発の成果を受けて、パイロットプラントの10倍規模である生産規模300t/日(実機の1/5規模)の実証設備(粉砕・乾燥設備、混練・成型設備、乾留設備)をJFEスチール西日本製鉄所(広島県福山市)へ設置します。この実証設備ではフェロコークスの連続製造と高炉への装入により、10%の省エネルギー効果を検証します。その検証結果を基に、2023~2030年度において、実機最大5基程度へ本技術を展開します。本技術の導入効果としては、省エネルギー効果量19万kL(原油換算)、CO2削減量82万t-CO2、コークス用石炭使用量の削減により約280億円の経済効果が期待されます。図24◉ 試験高炉の外観(東日本製鉄所君津地区)出典:日本製鉄図25◉ 日本製鉄 室蘭製鉄所(120t-CO2/日)出典:日本製鉄図26◉ 住友共同電力 新居浜西火力発電所(143t-CO2/日)出典:日本製鉄

元のページ  ../index.html#139

このブックを見る