NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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天野 浩 氏 名古屋大学 教授CIRFE センター長 石塚 博昭 NEDO 理事長[ ノーベル物理学賞受賞 ]40th12 NEDO 40年史 石塚 天野先生がノーベル賞を受賞された窒化ガリウム(GaN)は、長い研究開発を経て青色LEDをはじめとする様々な応用技術の社会実装が実現されてきました。この40年の日本のイノベーションを振り返ったとき、イノベーション創出のためのブレイクスルーは何だとお考えでしょうか。天野氏 やはり人、教育だと思います。青色LEDの発明からイノベーションまで30年かかりましたが、投資家からは「30年待てない、10年が限度」と指摘されました。当時、研究者に加えて生産技術やビジネスに長けた人がいたら10年になったかもしれない。その思いから今、5年一貫の博士課程学位プログラムでスタートアップ起業などを目指す「卓越大学院プログラム」を進めています。工学系の学生は技術については非常に頑張るし、面白いことにはどんどん突き進む。けれども顧客は誰かとか市場調査はやったのかといった、ビジネスの基本部分はまだまだで、メンターである企業の方々からご指導いただいています。これまでの工学部の教育はビジネス、社会を見る目を経験させてこなかったとの反省があります。石塚 NEDOは産学官連携を掲げて技術開発プロジェクトを推進しており、プロジェクトごとにNEDO内でプロジェクトマネージャー(PM)を任命し、サポートとして大学の先生などにプロジェクトリーダー(PL)になっていただいています。プロジェクトの成果を社会実装するには、経済合理性が必要です。コストが高くても価値を認めて買ってくれるマーケットがあれば問題はありません。単純なコストではなく、経済合理性、社会受容性、環境適合性の三原則が社会実装に必要だと、PMには常に言っています。天野氏 やはり、色々な経験を積んだ人がPMに就い天野 浩氏 (AMANO Hiroshi)1983年名古屋大学工学部電子工学科卒業。1989年工学博士取得。2010年名古屋大学大学院工学研究科教授。2014年青色LEDの研究により赤﨑勇氏、中村修二氏と共にノーベル物理学賞を受賞。2015年10月から名古屋大学 未来材料・システム研究所附属未来エレクトロニクス集積研究センター(CIRFE)センター長・教授。「次世代照明等の実現に向けた窒化物半導体等基盤技術開発/次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発」(2009〜2013年度)などのNEDOプロジェクトに参加。産学連携で人材育成革新創出へ巻頭インタビュー ◉ イノベーションへの提言 ②

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