NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  省エネルギー・環境分野環境・省資源技術 NEDO 40年史 143フロン対策歴史と背景ノンフロン化技術開発の歩み 特定フロンやその代替として開発された代替フロンは「熱に強い」「化学的に安定している」といった優れた特性から、冷蔵庫やエアコンなどの冷媒、産業用洗浄剤、発泡剤、半導体・液晶製造分野など幅広い分野で利用されてきました。このうち、特定フロン(CFC、HCFC)はオゾン層破壊効果を有することが分かり、モントリオール議定書(1987年採択)による規制の対象となりました。これにより、近年、特定フロンから代替フロンであるハイドロフルオロカーボン(HFC)への切り替えが進み、特定フロンがオゾン層へ及ぼす影響は小さくなってきました。しかし、代替フロンはオゾン層破壊への影響が少ないものの、少量の排出であってもCO2の数百倍から数万倍の温室効果を持つことが明らかとなり、地球温暖化防止の観点から、温室効果の低い物質への転換が求められています。代替フロンはその温室効果の高さから、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(1997年採択)、パリ協定(2015年採択)における削減対象となりました。さらに、2016年にはモントリオール議定書のHFCの生産及び消費量の段階的削減義務等を定める議定書の改正(キガリ改正)が行われ、先進国は2019年以降、2036年までにHFCの生産・消費量を段階的に85%削減することが義務付けられることとなりました。 NEDOは、 2005年度からの「ノンフロン型省エネ冷凍空調システム開発」 、2007年度からの「革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト」といった、温室効果が高い代替フロンを使用しないノンフロン化技術の研究開発を進めてきました。2011年度以降は、冷凍・空調分野(冷媒)などにおいて、地球温暖化への影響が少ない低温室効果な冷媒やその適用機器の技術開発にも着手しています。代替フロンの主たる用途である冷媒において低温室効果冷媒の普及が進めば、地球温暖化防止へ大きな効果が期待できます。オゾン層破壊メカニズム発見ウィーン条約採択1985モントリオール議定書採択1987気候変動枠組条約採択19922030年に向けて排出量増加の見込み▼新たな対策が必要京都議定書採択1997モントリオール議定書キガリ改正※採択2016パリ協定採択2015オゾン層破壊効果有温室効果大オゾン層破壊効果無温室効果大オゾン層破壊効果無温室効果小ODP:オゾン層破壊係数。CFC-11を1.0として、オゾン層に与える破壊効果の強さを表す。  GWP:地球温暖化係数。CO2を1として、温暖化影響の強さを表す。代替フロン(HFC)HFC-134aHFC-410AODP=0.0 GWP=1,430ODP=0.0 GWP=2,090特定フロン(CFC、HCFC)CFC-12HCFC-22ODP=1.0 GWP=10,900ODP=0.055 GWP=1,810オゾン層保護地球温暖化防止HFC排出量の削減義務づけ CFC :先進国・途上国ともほぼ全廃HCFC:先進国→2020年途上国→2030年 全廃予定HFCの生産・消費量削減代替代替冷媒転換低温室効果冷媒※キガリとは、ルワンダの首都キガリのことで、モントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)開催地。 その会合でモントリオール議定書改正が採択されたことに因んで、その改正は「キガリ改正」と呼ばれる。図34◉ フロン類を巡る規制と対策の流れ

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