NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  省エネルギー・環境分野環境・省資源技術 NEDO 40年史 147現状と課題ニーズを踏まえたシステム提案 日本の水関連産業は、部材・部品・機器製造、装置設計・組み立て・建設、運営・保守・管理という各分野で、多数の企業が存在し、個別に事業を展開しています。そのため、分野の垣根を越えて、横断的に事業を展開する企業は多くありません。一方、海外の水メジャーは、装置設計・組み立て・建設から運営・管理までを自社単独で一貫して元請けするサービスを提供しています。こうした水メジャーは、自国における水事業の運営・管理を通じ、安定した財政基盤を有しており、プライム・コントラクターとなって事業権を獲得しています。それに対し日本企業は、部材・部品・機器の納入や装置設計・組み立て・建設といったサブ・コントラクターとしての参画にとどまっているケースがほとんどです。 海外市場において水ビジネスを展開するためには、相手国が求めるニーズを踏まえた提案力、水源から蛇口までの各プロセスの機器やシステムをトータルコーディネートし、マネージする力が求められます。そのため、日本の強みである膜などの要素技術をさらに伸ばすとともに、事業の運営・管理を行うことが求められています。今後と展望水問題の解決、資源循環利用社会の実現に貢献 地球規模での人口の増加や経済発展、工業化の進展によって水需給が逼迫し、世界の水ビジネス市場は、今後さらに拡大していくと予想されています。市場が伸びる理由としては、中国、インド、中東、アフリカなどの深刻な水不足や水質汚濁問題があります。将来的にはこのような国々で、生活排水を再生水として工業や灌漑に用いることを目指しており、高度な水処理技術の需要はさらに増えると予想されます。それに伴い、省エネルギー化が重要になることから、NEDOとしては現在実施している「エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業」に一層力を注ぐとともに、国内外の他機関との連携を強化し、世界の水ビジネス市場への日本企業進出を支援して、世界的な水問題の解決に貢献していきます。 また、廃水や排ガスに含まれるNOxなどの窒素化合物を省エネルギーで有用物質へと変換・資源化できれば、窒素系有害物処理分野におけるゲームチェンジが起こるものと期待されています。NEDOは、窒素資源循環利用社会を目指した研究開発にも取り組んでいきます。

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