NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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巻頭インタビュー    イノベーションへの提言 ② NEDO 40年史 13のイオン注入技術などの開発を進めています。飛んでいるドローンに電気を送る「ワイヤレス電力伝送システム」も実現可能と考えています。まさにこれからが勝負で、社会実装に向けた大量生産技術についての研究を進めようとしています。石塚 社会変化に柔軟に対応して解決することが、生き残るために必要ということですね。そこで、この40年で様々な役割を担ってきたNEDOに対する「次の10年」への期待をぜひ、お聞かせください。天野氏 私自身、若い頃にNEDOに支援いただいた深紫外線LEDの開発が、コロナウイルスの不活化技術として今、花開きつつあります。当初は役に立つのかともいわれましたが、あの時続けたことが今につながっています。NEDOにはぜひ、今後もシーズを掴まえて大事に育てることを続けていただきたい。もう1つ、2050年のカーボンニュートラル実現に向けてNEDOの重責が増すと思いますが、日本のイノベーションのリーダーとしての役割を果たしていただきたい。今回のコロナ禍で、国と国との往来が途絶えた時、生き延びるために国としての自立が重要と、改めて分かりました。そうした時に社会で必要となる様々な技術を、ぜひNEDO主導で実現していただきたいと思います。てほしいですね。産学官の連携について、アカデミアの立場からはコアとなる技術を持つ大学が中心になるのが一番やりやすいと思います。我々の場合、大学がGaNをやるぞと言って、それに興味がある企業や未来のビジネスを考えておられる企業に集まっていただく。実は、GaNは社会実装にあたっての課題がまだたくさんある段階なので、集まって議論しやすいですね。石塚 大企業を巻き込み、産学連携からシーズをニーズにつなげる、まさにオープンイノベーションの成功例ですね。一方で、研究段階では企業が魅力や将来性を感じにくい技術というケースもあります。天野氏 だからこそ、ファンディングエージェンシーとしてのNEDOの役割は重要です。目利きとして芽が出そうな技術を常にウォッチし、コンタクトして情報を集め、必要な時に必要な資金をつけるといった対応をしてくれる。そういう組織でいてほしいと思います。石塚 時宜を捉えてということでは、新型コロナウイルス感染症の影響が不透明な中、NEDOは2020年6月に「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」という短信レポートをいち早く公表しました。コロナ禍の社会におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の可能性について、様々な観点からの意見や情報をまとめています。また、NEDOは持続可能な社会の実現に向けて3つの社会システムが必要であると考え、それを支えるためには次世代モビリティーやパワーエレクトロニクス、エネルギーマネジメントシステムといったDX技術が必要だと考えています。天野氏 DXで鍵になると注目しているのがパワーデバイスです。GaNは照明をLED化することで7%の省エネルギーになるとされていましたが、パワーデバイスとして利用すればさらに10%の省エネルギーが可能となります。それからもう1つ、再生可能エネルギー中心になると電力網のインテリジェント化に加えて国内の電力系統に合わせて交流変換するパワーコンディショナーがますます重要になります。GaNはこうした用途でも耐圧が高い、高速スイッチングが可能といった特徴があり、我々は普及に向け低コスト化を進める研究やp型n型を自由に制御するためのGaNへ左が天野氏、右が石塚理事長シーズを大事に育て、社会実装

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