NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  産業技術分野ロボット・AI技術 NEDO 40年史 149ロボット分野歴史と背景進む社会実装 日本では、大企業を中心に、自動車、電機をはじめとする製造業において、産業用ロボットの導入が進みました。2000年代には「ロボット大国」といわれるまでにロボット産業が発展し、世界的にトップレベルの技術力を培いました。急速に進化するITとの融合も進み、産業用ロボットはより高度で複雑な作業領域での活用も期待されるようになりました。さらに、少子高齢化による労働力人口の減少、介護・福祉でのニーズ増大を背景に、産業用以外にも生活支援分野といった幅広い分野でロボットを活用しようという取り組みが広がってきました。 NEDOのロボット開発は、1998年の「人間協調・共存型ロボットシステム研究開発」プロジェクト(HRP)に始まり、以来、ロボットの新たな価値の創出を目指して日本のロボット技術開発を先導してきました。2005年には愛知万博「愛・地球博」で70種以上のロボットを展示し、サービスロボットの様々な可能性を示しました。それまで培ってきた基盤的な技術を活用しつつ、2005年度から「人間支援型ロボット実用化基盤技術開発」、2006年度には「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」を、さらに2009年度からは「生活支援ロボット実用化プロジェクト」を実施しました。 2011年3月11日、東日本大震災が発生し、莫大な数の人命が失われ、数多くの建物が破壊されました。原子力発電所でメルトダウンが発生し、事故の安定化・廃炉が焦眉の課題となりました。過酷な環境での作業に日本・海外から多くのロボットが参加する中、NEDOの「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」で開発した学校法人千葉工業大学の「Quince」が放射線量のモニタリングなどに活躍しました。また、同プロジェクトで開発された日立建機株式会社の双腕仕様機「ASTACO NEO」も被災地で倒壊した建物の解体やがれきの撤去に活用されました。しかし、全体として日本の災害対応無人化システムは、実用機としてのシステム化に課題があることも明らかになりました。課題の克服を目指し、NEDOは2011年から「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」を実施しました。 またこの頃、笹子トンネルの天井板落下事故が発生し、高度成長期以降に整備された橋梁、トンネルなどの社会インフラの老朽化が大きな問題となりました注1)。このような問題にもロボット技術の貢献が期待され、「日本再興戦略 ─JAPAN is BACK─」(2013年6月閣議決定)では「モニタリング技術の高度化、ロボットによる点検・補修技術の開発等により、効率的・効果的なインフラ維持管理・更新を実現図1◉ 東日本大震災の復興に尽力したロボット千葉工業大学 Quince日立建機 ASTACO NEO注1) 建設後50年以上経過する社会インフラの割合が、道路橋では2013年の約18%から2033年には約67 %に、トンネルでは2013年の約20%から2033年には約50%にと、加速度的に高くなると試算された(出典:平成25年度国土交通白書)2-3-1. ロボット・AI技術

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