NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th150 NEDO 40年史 する」とうたわれました。この方針を受けて、NEDOは、2014年度から「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」を実施しました。 このように、ロボットはその活用範囲を広げ、社会課題を解決する原動力として期待されるようになってきました。同時に、ロボット技術もセンサーやAI(人工知能)などの進化によって、単なる作業ロボットから自ら学習し行動するようになるなど劇的な変化が起き始めていました。また、2010年代に入ってドイツが提唱した「インダストリー4.0」に代表されるように、急速に進化するAI/IoT(Internet of Things)などのデジタル技術を活用して産業の競争力を飛躍的に向上させようという取り組みが世界各国で行われるようになりました。 このような状況の下、2014年5月、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会の基調演説において安倍晋三首相(当時)は「ロボットによる『新たな産業革命』を起こす」と表明しました。これを受けて、同年9月には「ロボット革命実現会議」が発足し、2015年2月には、「ロボット新戦略」が日本経済再生本部で決定されました。具体的な推進母体としてロボット革命イニシアティブ協議会注2)が設置されました。 「ロボット新戦略」では、「ロボット革命」の実現に向けた戦略の3つの柱として、①世界のロボットイノベーション拠点-ロボット創出力の抜本的強化、②世界一のロボット利活用社会-ショーケース(ロボットがある日常の実現)、③世界をリードするロボット新時代への戦略、を掲げました。 そして、政府は2016年1月に閣議決定された第5期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会の姿として「Society 5.0」を提唱しました。これは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)です。さらに、2017年には「Society 5.0」を目指すための産業の在り方として「Connected Industries」が提唱され、ロボット・AIは、IoTやビッグデータと共にその実現に向けた中核的な技術と期待されました。 こうした政策に基づいて、NEDOはロボット・AI分野において2つのプロジェクトを2015年から進めました。1つは、「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」です。ロボットの要素技術として、革新的なセンシング/アクチュエーション/ロボットインテグレーション技術の開発に取り組みました。また、AIを搭載したロボットの開発を進め、2020年には11体を開発成果として紹介しました。もう1つは、「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」です。ものづくり分野、サービス分野を中心に、これまでロボットが適用されてこなかった産業へのロボット導入を促進するため、また、ロボット導入費削減や誰もが使いこなせるEasy to Useなロボットを実現するため、プラットフォームロボットやプラットフォームソフトウエアの開発とともに様々なロボットの技術開発を行いました。 「ロボット新戦略」では、ロボットの競技会や実証実験、デモンストレーションを行うロボットオリンピック(仮称)の検討も提唱されました。この構想は、経済産業省とNEDOが主催する「World Robot Summit(WRS)」として具体化されました。あらかじめ設定された技術課題に対し、オープンな場で様々な技術者が多様なソリューションで競い合う競技会という仕組みは、新たなオープンイノベーションのツールとして大いに期待されました。2018年10月にはプレイベントとし図2◉ 皮膚センサー(上)、小型・高効率・高出力なアクチュエーター(中央)、3本指ロボットハンド(下)注2) 2020年6月、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会に改称

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