NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th160 NEDO 40年史 したスマートな社会を実現するための研究開発・実証を行います。 狙いは、日本の得意分野にAI技術を応用することで競争優位性を確保することです。そのために、AI技術の有効活用に不可欠な現場データの明確化と取得・蓄積・加工のノウハウを確立し、AI技術の社会実装の先行的な成功事例を創出します。さらに、社会の様々なニーズにきめ細かく対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられる超スマート社会の構築を推進します。現状と課題国際競争の中で開発投資が不足 2020年現在、AI技術分野の国際競争では巨額の研究開発投資を行っている米国と中国を筆頭として、世界各国による激しい技術競争が行われており、論文数、特許数ともに大きく伸びています。日本は音声処理やロボティクスへのAI適用は比較的優位と言えるものの、米国と中国に比べ研究開発投資が不足しているのが現状です。 AI技術は、広告をはじめとするネット産業から実社会へ適用が進行しています。実社会の中でも、製造、卸売り・小売りなどからAI技術の適用が始まり、今後は医療・福祉や、電力・ガス・通信、交通・運輸などのインフラストラクチャー、教育といった社会的・経済的に大きな影響を及ぼす分野への適用が期待されています。今後と展望適用領域の広がるAI技術 今後のさらなる計算機の性能向上によって、AI技術はより精度の高い推論を導き出すことが可能になるとみられ、これからの社会にとって必要不可欠であるといえます。特に日本では生産年齢人口の減少による人手不足とともに労働生産性の向上が大きな課題となっています。AI技術は、こうした課題の解決につながる中核的な技術の一つとして大いに期待されています。ただし、AI技術の導入に当たっては、医療、交通、教育など、AIの推論結果が社会的・経済的に大きな影響を及ぼす分野では、AIの推論結果を人間が理解できず判断の材料として使えないことや、AIの品質を評価・管理する手法が完全には確立されていないことなどが課題となっています。 これらの課題を解決するため、NEDOは2020~2024年度の5年間にわたるプロジェクトとして、「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」を開始しました。AIの推論根拠や過程を示すことによって、人がAIを理解できるようにする技術を開発します。AIならではの判断とその根拠から人が新たな気付きを得られると同時に、人の経験や知識をAIに導入することで、人の感性に合ったより身近なAIシステムの実現を目指します。 次の10年間に、NEDOはAIが人々の生活や様々な産業にとって「より身近な技術」となる社会の実現を目指します。

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