NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
175/288

Chapter 2  産業技術分野ものづくり技術 NEDO 40年史 173現状と課題技術の取り込みやメカニズム解明が必要 日本は、CO2レーザーなどのガスレーザーの開発で世界を先導し、レーザー加工機システムでも圧倒的な世界市場シェアを占めていました。しかし、日本で開発された光ファイバー通信システム向け光ファイバー増幅技術を応用して、ファイバーレーザーが開発され、その省電力性や優れたビーム品質、北米で進展した高出力化などが決め手となり、海外製の高出力ファイバーレーザーが浸透しました。現在、こうしたファイバーレーザーなどの高出力固体レーザー技術やそれを応用した加工システムの世界市場で、日本は海外勢の後塵を拝しているのが実情です。 また、鋳造や鍛造、金属プレスといった日本の素形材産業の競争力を強化していくためには、日本のみならずグローバル市場から付加価値の高いものづくり技術を取り込んで収益性を高め、高い技術力を保有している企業群の稼ぐ力をさらに引き出して、産業の底上げを図ることが急務となります。しかし、金属の積層造形技術はそもそもの現象解明の研究さえも十分には進んでいないため、付加価値が高い複雑形状、高機能の部品や機能性合金の造形では品質の再現性を確保することが難しく、新規開発に多大なコストと時間がかかることが課題となっています。今後と展望社会普及と産業競争力強化に向けて 日本の製造業による輸出競争力を保持していくには、世界をリードできる次世代レーザー加工機産業を確立し、そのレーザー加工機を早期にものづくりの現場へ広く普及させる必要があります。高輝度で高効率な実用性の高いレーザー装置とそれを組み込んだレーザー加工機、レーザー加工技術の開発を日本のものづくり産業の競争力強化につなげるため、産学官の英知を集結し開発する必要があります。 また積層造形分野では、品質に大きな影響を及ぼす金属の溶融凝固メカニズムが解明されておらず、金属部品の積層造形における品質の再現性の確保が課題となっています。このメカニズムを解明し、欠陥の発生要因を明確化できれば、高品質・高信頼の3Dプリンタが実現します。日本がこれを先んじて開発・社会実装し、従来のものづくりの強みを生かしつつ、グローバルニーズにも対応することで、サポーティングインダストリーとしての競争力強化につながっていきます。今後もレーザーによる加工技術や、3Dプリンタなどによる三次元積層造形技術の開発と社会実装を推進し、ものづくり産業の産業競争力強化を図ります。図3 ◉ 事業イメージ造形プロセス技術溶融現象の観察装置技術レーザー方式3Dプリンタ電子ビーム方式3Dプリンタ砂型用3Dプリンタ合金粉末事業化溶融シミュレーション粉末材料技術医療 自動車発電 航空 宇宙 他

元のページ  ../index.html#175

このブックを見る