NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  産業技術分野材料・ナノテクノロジー NEDO 40年史 175 本プロジェクト成果例としては、熱可塑性樹脂と炭素繊維を混練する「LFT-D(Long Fiber Thermoplastics -Direct)工法」を用いることで、熱可塑性CFRPだけによる自動車用シャシーの製作に世界で初めて成功しました。これにより、材料供給から最終製品までの一貫自動生産が可能になり、部材コストの低減にめどを付けることができました。また鉄道車両分野では、難燃性のマグネシウム合金を用いて新幹線車両と同一断面サイズの高速鉄道車両部分構体を試作することに成功しました。この構体は、難燃性のマグネシウム合金のみを使った世界最大級の大型構造物です。❖ 次世代構造部材創製・加工技術開発 [ 2015〜2019年度 ] エネルギー消費量削減やCO2排出量削減は、国際的な重要課題です。航空機産業では、燃費改善や環境適合性向上、整備性向上、安全性向上といったニーズがあり、国際的な産業競争が激化しています。本事業では、複合材料をはじめとする日本が強みを持つ材料分野での技術革新を促進し、航空機に必要な信頼性・コストなどの課題を解決するための要素技術を開発しました。具体的には、次世代複合材や軽金属構造部材の創製・加工技術、航空機用複合材料の複雑形状積層技術、航空機用難削材の高速切削加工技術、軽量耐熱複合材であるセラミック基複合材料(CMC)技術、航空機用構造設計シミュレーション技術の5つの領域です。 プロジェクトの成果として、複雑形状の熱硬化性CFRPに向けた安価で小型タイプの自動積層装置を開発しました。作業者による手積層と同等の品質を実現し、なおかつ複合材部材製造の高生産性・低コスト生産に対応できる積層速度での連続積層を可能としました。さらに易操作性・易メンテナンス性に加えて汎用性を備えたものとしました。 また、次世代航空機用エンジン材料であるCMCの開発では、強度3GPa以上かつ耐クリープ特性に優れた炭化ケイ素(SiC)繊維が得られました。繊維を編んだプリフォームにおいて、体積に占める繊維の割合が30%以上というプリフォームの量産プロセスを開発しました。併せて、母材であるマトリックスの改質、コーティングの両面から耐熱性向上を行うことで、初期強度に優れ、かつ1,400℃での水蒸気暴露後でも強度低下の少ないCMC製燃焼器パネルを開発しました。図4◉ エンジン燃焼試験の様子提供:IHI図6◉ エンジン部品の1つであるタービンシュラウドをCMCで製作した提供:IHI図5◉ SiC繊維提供:宇部興産添加剤熔融・混練炭素繊維ロービングからの連続供給高速プレス成形混練・押出(二軸スクリュー型)LFT-D押出素材保温・昇温炉熱可塑性樹脂原料図2◉ LFT-D工法の概念図提供:ISMA 図3◉ 試作した高速鉄道車両部分構体の外観提供:ISMA

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