NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  産業技術分野材料・ナノテクノロジー NEDO 40年史 179化学品製造プロセス❖ 二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発 [ 2014〜2021年度 ] 太陽光により水を水素と酸素に分解する光触媒と、得られた分解ガスから安全に水素を分離する分離膜、さらに水素とCO2からプラスチックの原料となる基幹化学品のオレフィンを効率的に合成する合成触媒の開発を行っています。太陽光エネルギーの水素への変換効率(STH:Solar to Hydrogen)10%を実現する光触媒を開発するとともに、光触媒による水分解パネルのフィールドテストを開始するなど、実用化に向けた取り組みを進めています。本プロジェクトによる化石資源に頼らない化学品製造プロセスは、2030年頃の実用化を目指しています。商用プラントの稼働が実現し、オレフィン製造のうち年間250万tに本技術を適用できれば、CO2排出量を年間約1,015万t削減する効果が期待できます。❖ 有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発 [ 2014〜2021年度 ] 本プロジェクトは「科学技術イノベーション総合戦略2014」におけるコア技術の一つである「革新的触媒技術」の要素技術として位置付けられました。日本が高い技術力を持つ触媒技術を生かし、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする砂から金属ケイ素に変換することなく直接有機ケイ素原料を得る製造プロセス技術や、有機ケイ素原料からの高機能有機ケイ素部材製造プロセス技術を開発しています。学術レベルの成果を実用化につなげていくため、プロジェクトを実施する国立研究開発法人産業技術総合研究所に対してケイ素化合物の製造企業を共同実施先とする産学官体制を構築し、実用化に向けた研究開発の選択と集中を強力に進めています。 本プロジェクトでは、砂から短時間で高効率に有機ケイ素原料(テトラアルコキシシラン)を直接合成する技術開発に成功しました。従来のような砂から金属ケイ素に変換する高温条件と工程を必要とせず、有機ケイ素原料を省エネルギー・低コストで製造できます。また、世界で初めて、ガラスやシリコーンの基本構造であるオルトケイ酸(Si(OH)4)の結晶の作製にも成功しました。基本単位から構造が制御されたシリコーンの合成が可能となり、高機能・高性能なケイ素材料製造への貢献が期待できます。これらの技術が実用化されることで、有機ケイ素部材の製造工程における大幅な省エネルギー・低コスト化と製品の機能性向上を目指します。分離膜光触媒太陽エネルギー発電所・工場H₂Oオレフィン(プラスチック原料等)C₄:ブテンC₃:プロピレンC₂:エチレンソーラー水素等製造プロセス技術開発+O₂CO₂H₂+COH₂H₂二酸化炭素資源化プロセス技術開発合成触媒図17◉ 太陽光による水素製造から二酸化炭素資源化までのプロセスの概要図16◉ 光触媒による水分解パネルのプロトタイプ提供:人工光合成化学プロセス技術研究組合 図19◉ Si(OH)4・2(Bu4NCl)の粉体提供:産業技術総合研究所図18◉ 世界初の構造解析に成功したオルトケイ酸の分子構造提供:産業技術総合研究所OOOOHHHHSi

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