NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  産業技術分野材料・ナノテクノロジー NEDO 40年史 181型感染症対策などの多数の目標の中で、イノベーションエンジンとして材料・ナノテクノロジー分野の技術革新に期待が高まっています。世界の主要国の政府による科学技術イノベーション政策において、強化すべき重要技術として必ず「マテリアル」が掲げられ、積極的な研究開発投資が行われています。例えば、米国は2011年に「Materials Genome Initiative」を立ち上げ、MIによる材料開発の短期化・低コスト化に向けて約5億ドルの投資を行いました。中国は2015年に「中国製造2025」を発表し、2025年までに核心的部材とその鍵となる基礎材料について70%の自給の実現を目標として、研究開発への投資を行っています。 素材産業の課題の1つとして、成果の実用化までに長期間を要し設備投資などの負担が大きいことが挙げられます。これは、素材開発から最終製品に至るまでのサプライチェーンが長く、多種多様なニーズ・シーズのマッチング、精緻な擦り合わせが必要となるためです。しかし、近年ではAI・ビッグデータの発展によって素材産業においても研究開発期間の短縮が進展しており、材料・ナノテクノロジー分野の研究開発に大きな変革期が訪れています。今後も世界の中で日本が存在感を発揮するためには、日本が強みを有する高度な製造プロセスとそれを支える計測・分析技術などを基に、材料・ナノテクノロジー分野の技術開発における生産性を向上することが求められています。今後と展望材料開発がけん引する産業技術力の強化 近年、MIなどデータ駆動型材料開発の研究開発が進展したこともあり、世界的に材料・ナノテクノロジー分野の研究開発の競争が激化しています。そのような状況の中で、日本の材料開発が世界をリードするためには、日本の強みである世界最高水準の研究施設・設備、良質なマテリアルデータを活用しつつ、新しい価値と産業を産み出す取り組みを進めることが重要です。NEDOは、「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」などで材料設計の共通的な基盤技術の開発を行い、「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発」などで革新的な技術を生かし社会課題の解決と新たな価値創造の実現を目指しています。今後も材料・ナノテクノロジー分野をけん引する研究開発環境を構築するとともに、産み出された技術を社会実装する技術開発マネジメントに取り組んでいきます。 また、急速に変化する社会情勢、技術開発の変革に対応するために、材料分野の俯瞰的な調査事業を実施しています。中長期的な視点で、社会に必要とされる技術ニーズ、技術シーズを捉えたプロジェクトを立案し、今後の日本の材料・ナノテクノロジー分野の産業技術力の強化に貢献する取り組みを進めていきます。

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