NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th182 NEDO 40年史  1970年代に「組み換えDNA技術」が開発され、生命現象を分子レベルで解明しその産業化を目指すようになった頃から、バイオテクノロジーは急速な展開を見せるようになりました。1988年、工業技術院(当時)からNEDOへバイオテクノロジーのプロジェクト運営が移管されると、基盤技術の色合いを残しながらも産業化の性格を強めた技術開発が進みました。1998年以降は「ヒトゲノム計画」など国際的に加速する生命科学の進歩に対応すべく、「ゲノムインフォマティクス技術」など、生命情報と情報技術を融合した様々なプロジェクトを展開しました。ここで培われたバイオテクノロジーの基盤技術により、その後のライフサイエンスの方法論は大きく変化しました。2000年代には「細胞内ネットワークのダイナミズム解析技術開発」「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発」などの創薬・診断分野の技術革新を進める事業を実施しました。 一方、2009年に経済協力開発機構(OECD)は、「The Bioeconomy to 2030」を発表し、2030年にはバイオエコノミー市場が大幅に拡大すること、中でもこれまで中心であった健康・医療分野以上に、物質生産などの工業利用の市場が拡大することを予想しました。このような中、2015年にNEDOは医療分野の事業を国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に移管し、NEDO自体はバイオテクノロジーの中でも工業分野により注力するようになりました。政府戦略においてもバイオエコノミーの実現は重要視されており、内閣府主導の統合イノベーション戦略推進会議で策定された「バイオ戦略2019」において、持続可能な新たな社会経済システムであるバイオエコノミー社会の実現が目標として掲げられました。それを踏まえ、NEDOはバイオエコノミー関連の技術開発事業を推進する部署として2019年に「バイオエコノミー推進室」を新設しました。セルロースナノファイバー(CNF)など次世代のバイオマス原料の実用化を目指す事業や、生物の細胞が持つ物質生産能力を利用するスマートセルインダストリーを実現するための事業に取り組んでいます。 最近10年の主なプロジェクトバイオ由来材料❖ グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発 [ 2009〜2015年度 ] 日本の化学品製造産業は国際的に高い技術力と競争力を有し、経済社会の発展2-3-5. バイオエコノミー関連技術歴史と背景医療分野から工業分野への変化

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