NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
185/288

Chapter 2  産業技術分野バイオエコノミー関連技術 NEDO 40年史 183を支えていますが、地球温暖化問題や資源枯渇問題が現実化しつつある中で様々な課題を抱えてもいます。そこで本プロジェクトでは、化学品の製造プロセスにおけるシンプル化、クリーン化、省エネルギー化、原材料・資源の多様化・有効利用、さらに、廃棄物の減容化、容易なリサイクルなどを実現することで、産業競争力強化や国際規制の先取りを図り、将来にわたって持続的に化学品を製造できるよう、新たなグリーン・サステイナブルケミカルプロセスの確立を目指しました。その中で、CNFにより補強した樹脂材料とその製造プロセスの開発を行う研究開発事業を立ち上げました。産学連携により材料開発を進め、さらに木材パルプに化学処理を施した変性セルロースを樹脂と混練し、同時にナノ解繊するという製造プロセスの開発に取り組みました。本研究開発の成果を基に星光PMC株式会社が製品化したCNF複合材料「STARCELⓇ」は、株式会社アシックスの高機能ランニングシューズ製品「GEL-KAYANOⓇ25(ゲルカヤノ25)」のミッドソール部材の原材料の一部に採用され、世界初のCNF強化樹脂応用製品の商品化が実現しました。世界規模で一般に販売される世界初のCNF適用シューズとなりました。❖ 非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発 [ 2013〜2019年度 ] プラスチックなどの化学品の大半は石油由来原料から製造されており、将来の石油枯渇リスクなどを乗り越えるためには、非石油由来原料への転換が重要です。本プロジェクトでは、石油由来製品と比較してコスト競争力のある非可食性バイオマスから化学品製造までの一貫製造プロセスの開発に取り組みました。・CNF一貫製造プロセスと部材化技術開発 CNFは鋼鉄の1/5の軽さで鋼鉄の5倍以上の強度を有する、軽量・高強度のバイオマス由来の高性能素材です。既存の石油由来素材の代替として、幅広い分野での活用が期待されています。本プロジェクトでは、産学官連携体制の下、耐熱性と樹脂との相溶性に優れた軽量・高強度の高性能ナノ繊維と、この材料で補強した樹脂複合材料を高効率で連続的に製造するプロセスである「京都プロセス」を世界に先駆けて開発しました。また、これらの技術を基に、木材や竹などの原料から樹脂複合材料までを一気に製造するテストプラントの稼働を開始しました。さらに、自動車メーカーなど複数のユーザー企業への試作物提供を進め、京都プロセスで得られるリグノCNF強化樹脂で成形した自動車部材を試作するなど、用途の絞り込みによる着実な社会実装の拡大を図りました。 また、本プロジェクトでは、CNF部材の社会実装を後押しするために様々な取り組みを行いました。CNFを取り扱う事業者などの安全管理を支援することを目的に、CNFの安全性評価手法に関する手順書や事例集などの文書類を作成して公開しました。また、CNFを利用するメーカーが用途に応じた原料を効率的に選択できるようにするため、原料評価書を作成して公開しました。加えて、企業においてCNF新製品開発の中核となる即戦力人材の育成を目的に、人材育成講座を開講しました。2020年度からは「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」プロジェクトを新規に立ち上げ、CNFの社会実装と市場拡大を早期に実現するための研究開発に取り組んでいます。提供:アシックス図2◉GEL-KAYANOⓇ25提供:星光PMC図1◉ STARCELⓇ 

元のページ  ../index.html#185

このブックを見る