NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  産業技術分野バイオエコノミー関連技術 NEDO 40年史 185的に高まると容易に予想されました。世界的競争に後れを取ることなく、バイオとデジタルの融合による競争力強化が急務であり、本事業を開始しました。 本事業では、化学合成では生産が難しい有用物質の創製、または従来法の生産性を上回ることを目的に、生物が持つ物質生産能力を人工的に最大限引き出した細胞「スマートセル」を構築するための基盤技術を開発しました。実用テーマ推進企業に開発中の基盤技術を応用する仕組みを採用することで、開発技術の実用化促進を図り研究開発を推進してきました。研究予算の追加・開発テーマの統合・成果の相互利用により、国産ゲノム編集技術の知財化加速、植物栽培環境制御技術の実用性向上、バイオとデジタルの融合プラットフォーム確立といった成果につながっています。 様々な有用物質を生産する能力を持つ植物を活用する場合、重要となるのは生産性制御に関わる技術です。本事業では、既存のゲノム編集技術とは異なる国産のゲノム編集技術や代謝系遺伝子発現制御技術、効率的な生産蓄積技術、栽培・生育環境による生産性制御技術を開発しています。同時に、医薬品中間体原料、健康機能性成分、農業利用が期待される物質などの生産性向上を目指す応用開発を進めています。特に、栽培・生育環境の制御による二次代謝産物の高効率生産技術は、様々な有用代謝産物へとつながるハブ化合物動態に着目するという、これまでにないコンセプトで開発された独自性の高いものです。同技術の利用を検討するユーザー企業が増えつつあります。 植物と比べて比較的遺伝子操作をしやすい微生物では、情報解析技術やロボティクスを活用して効率的かつ短期間にスマートセルを作り出します。生物情報データベースから有用化合物の大量生産につながる代謝経路を設計するDesignステップ、その代謝経路を効率良く微生物に搭載するBuildステップ、作成したスマートセル候補微生物の性能を見るTestステップ、得られた様々な実験データを組み込んでデータベースを強化するLearnステップの4ステップを繰り返すことで、実用レベルのスマートセルに育てていきます。各ステップで必要となる基盤技術は14の課題に分けて開発しています。それと並行して、技術の有効性を検証しつつデータや改良点をフィードバックする課題を走らせることで、研究のため生物の機能を利用細胞内に生産プロセスを構築スマートセルによる物質生産を産業化スマートセル植物植物PETボトル合成ゴムサプリメント、タイヤ、化粧品 など微生物細胞を物質生産工場のように機能させるデジタル技術(ITや人工知能(AI)を活用)最先端バイオ技術生物機能をデザイン機能発現を制御微生物スマートセルインダストリー生物機能を最大限に引き出す!サステナブルなものづくりを実現!!図8◉ スマートセルに関するプロジェクトの概念図図9◉ 人工環境型植物工場での環境制御技術適用栽培

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