NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  産業技術分野バイオエコノミー関連技術 NEDO 40年史 187いかに実現するかという戦略への転換が求められています。今後と展望バイオエコノミー社会の実現に向けて バイオエコノミー市場は、2030年にはOECD諸国のGDPの2.7%(約1.6兆ドル、約192兆円)に成長し、特に、酵素やバイオ燃料、バイオプラスチックといった物質生産などの工業用途が全体の39%に達すると予測されています。その中で日本が国際競争力を持つためには、個別ラボでの分散型・縦割り構造を脱却し、国際連携や分野融合、組織間連携を実行する意識と仕組みをこれまで以上に強化する必要があります。NEDOは、新たなバイオ生産システム開発を目指す「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」プロジェクトを2020年度に開始しており、このプロジェクトには産学官合わせて数十機関が参画しています。このように多数の機関が互いに連携しながら研究開発に取り組むことで、シナジー効果が発揮されることが期待できます。また、昨今顕在化している海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、海洋生分解性プラスチックの市場導入を促進するべく「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」にも取り組み始めています。 今後も、産学官の様々な機関・人の力を連携させ、バイオエコノミー社会の実現に向けて必要とされる技術開発を推進するとともに、社会実装に向けた取り組みに注力していきます。Column: 海洋生分解性プラスチックの 社会実装に向けた技術開発事業 プラスチックは、軽量かつ丈夫であり加工性に優れるといった特性を持ち、日常生活の利便性などをもたらす素材として幅広く活用されています。その一方で、新興国の経済発展と世界的な生産量の増加に伴い、近年、プラスチックごみによる海洋汚染が問題視されるようになってきました。現在、国内プラスチック生産量(年間1,000万t程度)のうち、国内市場に占める生分解性プラスチックは2,300t程度と割合が小さく、陸域の土壌またはコンポストでの分解を前提としたものが主流であり、海洋生分解性を有するプラスチックはわずかな種類しか存在しません。そのため、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けた海洋生分解性を有する新素材開発が求められています。また、海洋生分解性プラスチックの開発・普及のために、海洋生分解性の簡便で信頼性の高い評価手法の開発も求められています。このような背景の下、「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」を実施します。 「海洋生分解性に係る評価手法の確立」では、海洋生分解性プラスチックが分解されるメカニズムを解明するとともに、海洋生分解性の評価手法を確立します。また、分解途中での水中汚染物質の吸着や樹脂添加剤の溶出など、生態系への安全性の評価手法も開発します。「海洋生分解性プラスチックに関する新技術・新素材の開発」では、新規化学構造を持つ樹脂などの新素材や新規バイオ製造プロセス、複合化技術といった新技術などによる海洋生分解性プラスチックの開発を行います。 これらの技術開発により、海洋生分解性プラスチックを利用した製品の社会実装・市場拡大を実現し、2030年には新たな海洋生分解性プラスチックの国内市場20万t/年を目指します。

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