NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th188 NEDO 40年史  2009年12月に閣議決定された「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」で「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」が示され、医療産業は成長けん引産業の1つと位置付けられました。当時、日本の医療産業は急成長を続けていましたが、世界的な競争の激化により、医薬品・医療機器では貿易赤字が拡大し、さらに再生医療や個別化医療などの新たな開発分野でも実用化面での遅れが指摘されていました。また、高齢化の進展に伴い増加するがん、心疾患、脳血管疾患への対策も求められていました。 このような課題に対応して、NEDOは医薬品開発支援(創薬基盤)技術の開発、革新的な医療機器や再生医療の実用化開発、医療機器・システムの海外研究開発・実証などのプロジェクトを推進しました。 そして、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略 ─JAPAN is BACK─」では国民の「健康寿命」の延伸が掲げられ、その中で医療分野における研究開発の司令塔機能の創設が打ち出されました。これに基づいて2015年4月、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が設立され、NEDOが実施していた医療技術の研究開発が移管されました。AMEDでは、医療分野の基礎から実用化までの研究開発の切れ目ない実施、また、その成果の円滑な実用化支援が進められています。 最近10年の主なプロジェクト❖ がん超早期診断・治療機器の総合研究開発 [ 2010〜2014年度(一部は2008年度開始) ] 本事業では、日本において死因の第1位を占めるがんについて、特に死亡者数が多く、5年生存率が低い「肺がん・肝がん・膵がん」などを対象に、患者の生存率やQOL(Quality Of Life)の向上、早期の社会復帰を目指し、より早期に発見・診断し、高精度・低侵襲な治療法の選択を可能とする技術開発を行いました。 具体的には、治療を行う基準となる「治療にたり得る1cm程度の早期がん」 「がん細胞の浸潤・転移性」 「治療効果」の高精度な診断を目指し、(1)血液中に循環するがん細胞の検出・遺伝子診断システム、(2)経時的にがんの性状をモニターできるマルチモダリティ対応フレキシブルPET(Positron Emission Tomography、陽電子断層撮像)装置、(3)がんの特性を識別する分子イメージング薬剤とその自動合成装置、(4)定量的で効率的な病理診断を可能とする病理画像認識/解析システム、(5)蛍光ナノイメージングによる分子病理診断技術の開発を実施しました。 また、治療技術としては低侵襲治療の実現を目指し、(1)複雑に動く臓器の微小ながんをリアルタイムに追尾してX線照射する小型治療装置、(2)患部を精度良2-3-6. 医療技術歴史と背景革新的な医療技術の実現を目指して

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