NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
191/288

Chapter 2  産業技術分野医療技術 NEDO 40年史 189く効率的に治療できる内視鏡下手術支援ロボットシステムの開発を行いました。さらに2013年度には、社会的な関心や患者の増加傾向を踏まえ、大腸がんのエクソソーム注1)診断技術、乳がん発症予測技術の開発にも取り組みました。 これらの研究開発は、臨床機関のニーズと企業の技術力を結び付けた医工連携体制を構築して実施し、臨床における有効性を評価して速やかな臨床研究・承認への橋渡しを目指しました。❖ ヒト幹細胞産業応用促進基盤技術開発 ・ヒトiPS細胞等幹細胞を用いた創薬スクリーニングシステムの開発 [ 2008〜2013年度 ] ・ヒト幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発 [ 2010〜2013年度 ] 多能性幹細胞は様々な細胞に分化する能力を有し、適切な分化誘導により神経、心筋細胞など様々な細胞を得ることができます。このため、創薬における薬効評価や安全性試験などのスクリーニング、発生・分化や疾患メカニズムの解明、再生医療への応用など、生命科学、医療分野への貢献が期待されています。中でもiPS細胞(人工多能性幹細胞)は有用な細胞源として期待され、2012年に「成熟細胞が初期化され多能性を獲得し得ることの発見」がノーベル生理学・医学賞の対象となり、社会的にもiPS細胞をはじめ各種ヒト幹細胞の活用促進に期待が高まりました。 ヒト幹細胞の産業利用に向けては、細胞の効率的な確保方法、腫瘍化問題の解決・回避方法、目的細胞を選別する方法、品質を維持・管理し培養する方法の確立が極めて重要です。また、最も早い産業応用が期待されている創薬分野では、開発効率の向上やリスク低減のために、ヒト幹細胞から分化誘導を行った各種細胞を用いて、ヒト個体での薬効と安全性を高精度で予測する基盤技術の開発が求められています。 こうした状況を踏まえ、本事業では、品質の管理されたヒト幹細胞を安定的に大量供給する技術の開発、また、ヒト幹細胞を活用して、開発候補薬の潜在的な致死性不整脈を誘発する可能性についてヒト個体と高い相関性をもって予測する、創薬スクリーニングシステムの開発を行いました。 これにより、日本が世界を先導している科学的成果であるヒトiPS細胞やその他のヒト幹細胞などを、いち早く産業応用につなげるとともに、周辺産業を含めた国際市場への展開を図り、産業競争力の確保につなげることを目指しました。図1◉ 細胞膜領域(水色)の特定発現タンパク“HER2”に吸着する蛍光ナノ粒子(赤色)像図2◉ 消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット全景注1)細胞から分泌される直径30~100nmの微小な顆粒状の物質で、血液・唾液・尿などの体液中に存在する。様々な情報伝達物質を内包し、細胞間でやりとりされることから、細胞間コミュニケーションツールとしての役割が予想されている

元のページ  ../index.html#191

このブックを見る