NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  国際関連事業 NEDO 40年史 197注4)冷房時に発生する潜熱と顕熱を別プロセスで処理する空調システム図6◉ 上海高等研究院「幹細胞再生医学研究棟」❖ 省エネルギービル実証事業(中国・ 上海) [ 2013〜2017年度 ]  世界第1位のエネルギー消費大国である中国において、建物の省エネルギー化は重要な政策の1つに位置付けられています。NEDOは中国科学院(CAS)とともに、上海市の上海高等研究院「幹細胞再生医学研究棟」を対象に、高度な省エネルギービルを目指す実証事業を実施しました。高効率熱源、熱回収機器、潜顕分離空調注4)、再生可能エネルギー利用、ビルエネルギーマネジメントシステムといった日本の省エネルギー技術を設計段階から導入し、従来型システムと比べて46%の省エネルギー化を実現しました。実証事業の成果を受け、中国国内だけでなく、タイで開催された日中第三国協力技術セミナーにおいても事業成果のPRを行い、高い注目を集めました。今後さらなる普及を目指していきます。今後と展望世界のエネルギー転換・脱炭素化に挑戦 国際エネルギー機関(IEA)によると、世界各国で省エネルギー政策を実施したとしても世界の一次エネルギー需要は2040年には2018年比で約1.2倍となる見込みです。今後も海外においてエネルギー消費の拡大を抑制することは、日本のエネルギー安全保障だけでなく、エネルギー起源の温室効果ガスの排出抑制を通じて地球温暖化問題の解決にも貢献するものです。さらにその際に日本の優れた技術を用いることで、日本のエネルギー・環境関連産業の発展を目指します。 今後は、エネルギー転換・脱炭素化を図る世界のエネルギー市場の変化を見据え、その中でソリューションとなる技術の実証を展開します。そのためには、日本企業が優位性を持ち相手国・国際市場で求められる技術を重点化するとともに、どこの市場で効果的に普及展開できるかを検証していきます。具体的には、水素技術やデジタル技術を用いたエネルギーマネジメントシステムなど、日本が競争力を有する高付加価値な技術の有用性・優位性を、アジアの新興国といった特に今後成長が見込まれる地域のスマートシティなどにおいて可視化することが、日本の技術の普及につながるのではないかと考えています。さらに、それらの実証で得られた経験やデータを用いて、日本国内のエネルギー技術・システムの発展に貢献することも見据えて事業を進めていきます。

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