NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th200 NEDO 40年史 のプラントなどの設計に仕様として織り込むスペックインを実現するため、実施者を中心に普及展開活動を継続しています。現状と課題日本の低炭素技術の普及で温暖化対策 パリ協定は2020年から本格的な運用が始まりましたが、パリ協定が追求するいわゆる2℃目標や21世紀後半での温室効果ガス排出と吸収の均衡を達成するには、国際社会全体でさらなる地球温暖化対策を進める必要があります。2019年11月に国連環境計画(UNEP)が発表した「Emissions Gap Report 2019(排出ギャップ報告書 2019)」によると、過去10年間で世界の温室効果ガス排出量は年率1.5%増加しており、2018年は森林伐採などの影響を受けて排出量が過去最高の553億t-CO2に達したと報告されています。さらに、同報告書では、2℃目標を達成するためには2030年時点での年間温室効果ガス排出量を現行の各国の削減目標よりも150億t-CO2減らす必要があることが指摘されています。これは中国と米国の年間CO2排出量(2017年)の合計に匹敵する排出削減が要求されているということです。 世界各国が温暖化対策を加速させる必要がある中、NEDOは日本の優れた低炭素技術を削減ポテンシャルの大きい途上国などでいち早く普及展開させることによって、地球温暖化問題に貢献できると考えています。このため、JCMなどのスキームを活用しつつ、費用対効果が高く大規模な温室効果ガスの排出削減や吸収につながる技術を海外で実証し、実証事業終了後に民間主導で相手国や第三国への普及展開につながる取り組みをさらに推進していくことが必要です。今後と展望温暖化対策が企業の「競争力の源泉」に 日本政府は2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、環境と成長の好循環によって、脱炭素社会を実現する長期ビジョンを示しました。また、ESG投資、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などの動きが活発化する中、環境活動の情報開示を積極的に行っている企業にグローバルな投資が集まる時代へ変化しつつあります。企業にとって環境対策はもはや「コスト」ではなく、「競争力の源泉」になっています。 このような動向を踏まえると、JCM事業などを通じて日本の優れた低炭素技術を海外で実証するだけでなく、企業価値を高める有効なツールとして活用してもらうことが重要です。NEDOは温室効果ガスの排出削減効果の「見える化」を積極的に推進し、国際社会への情報発信を行っていきます。そのためにも、COPなどの国際交渉動向を注視しつつ、「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」や「Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN(CEFIA)」といった、日本政府が主導する気候変動関連の国際的なプラットフォームなどとも連携しながら、パリ協定の目標達成に向けた国際貢献を進めていきます。

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