NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  新産業創出・シーズ発掘 NEDO 40年史 213ムーンショット型研究開発歴史と背景ムーンショット目標の決定 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)において、日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進することが決定され「ムーンショット型研究開発制度」が創設されました。 本制度に基づき、CSTIが2020年1月に決定したムーンショット目標と、経済産業省が策定した研究開発構想を踏まえ、NEDOは、ムーンショット目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」を達成するための挑戦的な研究開発(ムーンショット型研究開発事業)を実施しています。今後と展望地球環境の再生に向けて ムーンショット目標4では、地球温暖化問題、プラネタリーバウンダリー注2)を超えた危険領域にあるとされる窒素循環の問題、海洋プラスチックごみ問題などの解決に向け、「地球温暖化問題の解決(クールアース)」と「環境汚染問題の解決(クリーンアース)」のコンセプトの下、目標達成を目指します。 事業の推進にあたっては、プログラムディレクター(PD)に公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長・研究所長 山地憲治氏を任命し、2020年8月に表1の研究開発プロジェクトを採択・推進しています。・ 大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収(DAC:Direct Air Capture)し、有効利用する(CCU)技術の開発・ 生分解のタイミングをコントロールするスイッチ機能を有する海洋生分解性プラスチックの開発・ 農地由来のN2Oやメタンを無害化・有効利用する技術の開発・ 排ガス中や排水中の窒素化合物を無害化・有効利用する技術の開発図13◉ 持続可能な資源循環の実現に向けて取り組む研究開発(1)温室効果ガスを回収、資源転換、無害化する技術の開発◎電気エネルギーを利用し大気CO2を固定するバイオプロセスの研究開発 【PM】加藤 創一郎(国立研究開発法人産業技術総合研究所)◎大気中からの高効率CO2分離回収・炭素循環技術の開発 【PM】児玉 昭雄(国立大学法人金沢大学)◎電気化学プロセスを主体とする革新的CO2大量資源化システムの開発 【PM】杉山 正和(国立大学法人東京大学)◎C4S研究開発プロジェクト 【PM】野口 貴文(国立大学法人東京大学)◎冷熱を利用した大気中二酸化炭素直接回収の研究開発 【PM】則永 行庸(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学)◎大気中CO2を利用可能な統合化固定・反応系(quad-C system)の開発 【PM】福島 康裕(国立大学法人東北大学)◎“ビヨンド・ゼロ”社会実現に向けたCO2循環システムの研究開発 【PM】藤川 茂紀(国立大学法人九州大学)◎資源循環の最適化による農地由来の温室効果ガスの排出削減 【PM】南澤 究(国立大学法人東北大学)(2)窒素化合物を回収、資源転換、無害化する技術の開発◎産業活動由来の希薄な窒素化合物の循環技術創出―プラネタリーバウンダリー問題の解決に向けて 【PM】川本 徹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)◎窒素資源循環社会を実現するための希薄反応性窒素の回収・除去技術開発 【PM】脇原 徹(国立大学法人東京大学)(3)生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発◎非可食性バイオマスを原料とした海洋分解可能なマルチロック型バイオポリマーの研究開発 【PM】伊藤 耕三(国立大学法人東京大学)◎生分解開始スイッチ機能を有する海洋分解性プラスチックの研究開発 【PM】粕谷 健一(国立大学法人群馬大学)◎光スイッチ型海洋分解性の可食プラスチックの開発研究 【PM】金子 達雄(国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学)表1◉ 研究開発プロジェクト一覧C4S:Calcium Carbonate Circulation System for Construction(建設分野の炭酸カルシウム循環システム)PM:プロジェクトマネージャー注2)人間社会の発展と繁栄を継続するために、地球環境の9つの領域において定められた限界値。これを超えると人間が依存する自然資源に対して、回復不可能な変化が引き起こされる

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