NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 1  Part 1  エネルギー・環境・産業技術の40年と未来へ向けてした家庭用燃料電池システム「エネファーム」です。2005年度からNEDOで実施した「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発」などの成果が形となりました。「一社だけでは事業化が困難」という産業界の声に応え、競合関係にある企業の競争領域と協調領域の棲み分けを整理し、効率的な研究開発を推進、同時に様々な規制についても、安全基準策定の指標となる具体的なデータを関係各省に提供するなど、NEDOはマネジメント力を発揮し、産学官連携を後押ししながら、実用化を加速していきました。 国は2008年に「Cool Earth -エネルギー革新技術計画」を策定し、重点的に取り組むべき21の技術を公表していますが、革新的太陽光発電のほか、超高効率ヒートポンプや次世代高効率照明、定置用燃料電池など、原子力を除いた20のテーマについて、NEDOは重要な役割を担うこととなります。再生可能エネルギーの 大量導入時代に備える 太陽光発電システムの国内市場規模が2010年には5,000億円を突破するなど、国内外で再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みが進む中、日本では、2012年7月に固定価格買取制度(FIT制度)が始まり、再生可能エネルギーの大量導入社会の実現が見えてきました。折しも2011年3月に東日本大震災が起こり、国内はもとより世界各国でエネルギー政策を見直す動きが加速します。 再生可能エネルギーの大量導入時代を前に注目されてきたのが、「スマートコミュニティ」です。エリア内の分散型のエネルギー資源(電力や熱)を統合制御・管理することによって、エネルギーの効率的な利ロットプラントの開発を始めています。2000年代以降、欧州では、再生可能エネルギーの比率を2020年までに1990年比で20%に高めるという方針の下、風況がよい地域が多いことから風力発電の導入が 進んでおり、こうした国際動向を見ながら、NEDOは世界的に需要が伸びると見込まれた洋上風力発電の実証研究を2009年度から実施しています。ほかにも、設立当初から取り組んできた地熱では先導的な調査などを通じ、新規地熱発電所の立地選定に貢献するなど、再生可能エネルギーの土台を整えていきました。燃料電池・水素技術を社会へ NEDOが早くから取り組んできた地球環境問題解決のキーテクノロジーには、燃料電池・水素技術もあります。利用時にCO2を排出しないことから、次世代エネルギーとして期待を集め、国の「ムーンライト計画」の中で1978年から重点的に取り組まれてきました。NEDOは1981年度から発電効率の高い燃料電池の開発をスタートさせ、1980 年代後半から数百キロワットから数メガワット規模の定置用燃料電池の要素技術開発を、また、高出力密度や低温作動といった特徴を生かすべく、1992年度からは家庭用や自動車用電源としての活用を見据えて、「固体高分子形燃料電池(PEFC)」の研究開発を実施しています。併せて、水素利用の安全性についても、様々なデータを取得し、製造・輸送・貯蔵などの安全性に関わる技術を開発しました。 2000年代に入り、NEDOプロジェクトが着実に成果を上げる中、燃料電池・水素技術に対する国の期待はさらに高まっていきます。2006年の「第3期科学技術基本計画」では「先端燃料電池システムと安全な革新的水素貯蔵・輸送技術」が戦略重点科学技術として選定され、同年の「新・国家エネルギー戦略」や「新経済成長戦略」、さらには2007年「第2次エネルギー基本計画」にも燃料電池技術開発の重要性が記載されるなど、様々な観点で国の戦略に欠かせない技術となっていきます。 そうした中、実用化で社会に大きなインパクトを与えたのが、2009年に日本が世界に先駆けて商用化安全性評価や企業間の調整を経て商品化に成功した家庭用燃料電池システム「エネファーム」 NEDO 40年史 23

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