NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th用を実現するとともに、交通システムなど広範な領域の社会システムを対象としたITによる融合・最適化を促進し、持続可能な社会を目指す考え方です。 欧州や米国の一部の州では2000年前後から電力自由化が進展するとともに、分散型エネルギー資源や需要家に設置された機器、電気自動車(EV)を集約して、電力の市場取引などを行う新しいビジネスモデルの創出が進み、スマートコミュニティやスマートグリッドを構築する動きが活発化します。 そこでNEDOは、再生可能エネルギーなどの分散型エネルギー資源の導入や電力自由化が進む欧米の各都市で、日本の技術がどう活用できるか、2009年度の米国ニューメキシコ州を皮切りに、フランス・リヨン、米国ハワイ州、スペイン・マラガなどで実証事業を展開していきます。こうした実証事業を通じて、日本企業が海外市場における厳しい国際競争で優位に立つための仕組み作りにも、NEDOは取り組んできました。2010 年4月には、官民一体でのスマートコミュニティ推進を目的に、「スマートコミュニティ・アライアンス」(JSCA)を発足しています。幅広い分野の企業や団体が参加し、国際標準化に貢献するための活動や、国際展開、国内普及を通じて地球温暖化問題に貢献するための国際組織との連携など、業界の垣根を越えた取り組みを推進しています。革新的な技術で エネルギーミックスを先導 2018年に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、2030年に向けて再生可能エネルギーの主力電源化を目指し、エネルギーミックスとして多様な電源を導入する方針を改めて明確に示しました。 NEDOがこれまで取り組んできた再生可能エネルギー技術も、さらに重要性が増していきます。風力発電では商用化を意識したプロジェクトとして、北九州市沖でバージ型浮体式洋上風力発電システムを建設し、2019年5月から実証運転を開始。バイオマスの活用では、2014年度から地域の特性を生かした国内産バイオマスを使った「バイオマスのエネルギー利用に関する実証事業」に取り組んでいますが、さらに地域に根ざした安定的な原料調達を基本に、自立したバイオマスエネルギーの活用で地域と共生した循環社会を後押ししています。 また、島国である日本は、海洋エネルギー発電の大きなポテンシャルを持っています。NEDOは2011年度から海洋エネルギー発電の実証事業で水中浮遊式海流発電システム「かいりゅう」を開発し、2018年度から実海域における長期実証研究へと進めており、2030年以降の実用化を目指しています。 太陽光発電もさらなる普及に向け開発を進めています。2019年からのFIT制度による買い取り終了後の課題などを踏まえ、2020年から新たに「太陽光発電主力電源化推進技術開発」を開始しました。太陽光発電の長期安定電源化に向けた信頼性・安全性の推進、低コストなリサイクル技術の開発、太陽光発電の系統影響緩和に取り組むことで、エネルギーミックスをより確かなものにしていきます。 こうした様々な再生可能エネルギーの活用を可能にするために重要なのが、蓄電池です。NEDOは設立当初より電力貯蔵を目的とした蓄電池開発に取り組み、再生可能エネルギーの大量導入に伴う課題を解決してきました。同時に自動車用の蓄電池開発も推進し、基礎的な解明が進んでいなかったリチウムイオン電池のメカニズム解明からさらなる高効率な革新型蓄電池開発まで一貫して取り組み、訪れるEV普及に備えて、川上から川下の産業と連携しながら、蓄電池の技術力を高めています。活用と普及への新たな挑戦 再生可能エネルギーの開発が進む中、燃料電池・水素技術は、2008年の「Cool Earth -エネルギー革新風力発電の可能性を広げるため水深の浅い海域で設置可能なパージ型風力発電システムを北九州市沖に設置24 NEDO 40年史

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