NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
27/288

Chapter 1  Part 1  エネルギー・環境・産業技術の40年と未来へ向けての実証を本格化させました。 また世界的に水素の利活用が広がるなか、経済産業省とNEDOは2018年から、各国の閣僚レベルが水素社会の実現をメインテーマとして議論を交わす「水素閣僚会議」を毎年開催しています。日本が国際社会でリーダーシップを取りながら水素の活用と普及を進めていけるよう、より広い視野に立って水素活用の可能性を高めています。グリーン社会実現へ NEDOが2020年2月に制定した「持続可能な社会を実現する3つの社会システム」のうち、「持続可能なエネルギー」は、自然由来のエネルギー源の利用が最大化され、かつ、地球環境への負荷が最小化された社会システムのことです。具体的には、一次エネルギーとしての「再生可能エネルギー利用技術」、それらを転換・輸送・貯蔵するための「二次エネルギー関連技術」、それらの技術を統合しエネルギーの利活用の最適化を目指す「エネルギーマネジメント技術」、そしてエネルギーを可能な限り効率的に利用する「省エネルギー関連技術」の開発を進めることで低コスト化を実現し、早期に社会実装に結び付けることが重要と考えています。 2020年に就任した菅義偉首相は、10月の所信表明演説の中で、成長戦略の柱の一つとして「グリーン社会の実現」を掲げ、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの最大限導入など、積極的な温暖化対策が大きな成長につながるとしており、NEDOは今後も、持続可能な社会実現に向け、様々なエネルギー開発の挑戦を続けていきます。技術計画」に、定置用燃料電池、燃料電池自動車、水素製造・輸送・貯蔵が位置付けられたことで、本格的普及に向けたコストの低減や性能、耐久性、そして信頼性の向上という多様な要素を満たす革新的なブレークスルーが求められることになります。これにより、NEDOプロジェクトにおける燃料電池・水素技術開発も新たな挑戦が始まりました。 2014年12月に燃料電池自動車の一般発売が開始しましたが、燃料電池自動車の普及に欠かせない水素ステーションに関する技術開発も、2002年に最初の水素ステーションのプロトタイプを、そして2013 年には神奈川県海老名市に、日本で初めてガソリンスタンドと一体型の水素ステーションを建設し、NEDOは商用ベースの水素ステーションの普及を先導しました。 政府は、2050年を視野に将来目指すべき水素社会のビジョンを示した「水素基本戦略」を2017年12月に決定、経済産業省は2019年3月に具体的なアクションプランを示した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定し、これに伴い、NEDOは「水素社会」の実現に向けて、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの電力と水の電気分解を組み合わせてCO2フリー水素を供給するパワー・ツー・ガス(P2G)や、海外で製造した安価なCO2フリー水素を日本に運搬する国際サプライチェーンの構築に向けた技術開発を開始しています。 P2Gでは、福島県浪江町で太陽光発電を利用した世界最大級となる10MWの水素製造装置を備えた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」を建設、2020年3月に稼働を開始し、P2G燃料電池車の普及に向け建設された、ガソリンスタンドと一体型の水素ステーション「海老名中央水素ステーション」「水素社会」実現に向けP2G実証施設を建設した「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」 NEDO 40年史 25

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る