NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th サーキュラーエコノミー資源循環で脱炭素社会を目指す新たなエネルギー・環境技術へエネルギーの安定供給を支える オイルショックを契機に誕生したNEDOは、設立当初より、石油代替エネルギーの柱の一つとして行ってきた取り組みに、環境に優しい石炭利用のための技術開発があります。「サンシャイン計画」の下で石炭液化技術を、また、「ニューサンシャイン計画」の下ではさらに石炭を効率的で多用途に利用可能な石炭ガス化技術の開発を実施してきました。石炭が固体であることから石油と比較して輸送が不便であることや、燃焼時のCO2発生量が石油や天然ガスと比較して大きいといった課題解決に向けた取り組みは、NEDOの技術開発の原点とも言えます。 もともと石炭は安価なエネルギー源として、広く世界各国で利用されてきましたが、当初は石炭燃焼時に排出されるNOxやSOxといった公害問題が大きな課題でした。そこでNEDOは、排ガスや排水などの環境に配慮した方法で石炭を効率的に利用するための技術開発を「クリーン・コール・テクノロジー」として、国内のみならず中国やインドネシアなどでも様々なプロジェクトを推進し、環境問題解決に貢献してきました。国内においては、「石炭ガス化複合発電(IGCC)」や「多目的石炭ガス化製造技術開発(EAGLE)」などのガス化技術を確立しています。 そうした中、2000年代には世界で気象災害が多発するなど、地球温暖化対策がグローバルで喫緊の課題となります。石炭をはじめ石油や天然ガスなど、化石燃料を使う火力発電はCO2排出量削減への対策が求められるようになり、2008年の「CoolEarth -エネルギー革新技術計画」では、「高効率石炭火力発電」や「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」が重点的に取り組む技術として取り上げられ、NEDOは「ゼロエミッション石炭火力」実現に向けた革新的な技術開発を加速させることとなりました。CO2削減で「パリ協定」実現へ 中国やアジア新興国の経済的躍進や、温暖化が進行した2010年代、日本では2011年に東日本大震災による原子力発電の稼働停止を受け、電力のあり方に大きな関心が集まりました。不足する電力を補うため、石炭をはじめ火力発電はベースロード電源として社会を支える役割の一端を担うこととなります。その後、2015年「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」の開催で採択された「パリ協定」では、産業革命後の世界の平均気温上昇を2℃以内に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を継続することが明示され、改めて世界各国のエネルギー政策や地球温暖化対策を巡る議論に関心が集まります。この協定は、1997年採択の京都議定書以来18年ぶりの気候変動に関する国際的枠組みで、気候変動枠組条約に加盟する全196カ国が参加する初の枠組みとして、世界の目は日本にも注がれることになりました。 日本は「パリ協定」実現に向け、大気中のCO2を増加させないための技術として、省エネルギーや再生可能エネルギー利用などに加え、エネルギーシステムから排出されたCO2を分離・回収し、貯留して隔離する技術(CCS)も推し進めます。さらにCO2を有効利用(Utilization)し、CCSとあわせて取り組んでいく技術(CCUS)にも期待が寄せられていきます。 そこで経済産業省が2016年に発表した「次世代火力発電に係る技術ロードマップ」で、CCSやCCUSを推進する方針が示され、「石炭ガス化燃料電池複合 発電(IGFC)」や「ガスタービン燃料電池複合発電(GTFC)」といった次世代火力発電技術を早期に確立し、2030年度までに2013年度比でCO2などを含む温室効果ガスの排出量を26%削減する目標に向けて、石炭火力発電から排出されるCO2を大幅に削減できる、広島県大崎上島町にあるIGCCの実証プラント 提供:大崎クールジェン26 NEDO 40年史

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