NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 1  Part 1  エネルギー・環境・産業技術の40年と未来へ向けてて活用する「カーボンリサイクル」の推進も始まっています。NEDOはCO2と水素を反応させてメタンを合成するメタネーションの開発などの実証に取り組んでいます。メタンは天然ガスの主成分のため、エネルギーキャリアとして高いポテンシャルを有していると言われています。 2019年10月には、CO2と水素からメタンを合成する試験設備を新潟県長岡市に完成させました。今後、より商用化に近い大型メタネーション設備の建設と実証を進め、将来的には天然ガス導管に混入して、天然ガスインフラの一部としての実用化を検証していく計画です。こうしたCO2の資源化に向けた取り組みは、持続可能な循環型社会に大きく貢献するほか、資源の安定確保にもつながります。これらの取り組みは、2019年に日本で開催した「G20大阪サミット」の政府広報展示でも紹介されるなど、世界の注目を集めました。CO2を有効利用する「カーボンリサイクル」の技術開発が活発化。CO2を原料にメタンを合成するメタネーションの試験を新潟県長岡市で開始 提供:国際石油開発帝石 長岡鉱場 もともとリサイクルの考えが根付いている日本において、NEDOはいわゆる都市鉱山と呼ばれる金属資源など、様々なリサイクル技術の開発を推進してきました。しかし、CO2削減というグローバルなミッション達成に向け、地球上に存在するあらゆる物質資源を最大限有効活用し、かつ循環させながら、新たな消費が最小化された社会システムを構築する「サーキュラーエコノミー」をさらに推し進めていく必要があります。そのためのイノベーション創出にNEDOは率先して取り組み、持続可能な社会の構築に貢献していきます。NEDOプロジェクトも動き出すことになりました。 2016年度からNEDOで開始した「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」は、CO2分離・回収型石炭ガス化複合発電(IGCC)設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型IGFCを最終ゴールとしたプロジェクトです。石炭をガス化して、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせた複合発電で、ガス化の際にCO2を分離し水素を取り出せば、燃料電池で発電できます。つまり、石炭が水素の原料となりそのまま燃焼するより環境に優しいエネルギーとなります。広島県大崎上島町にあるIGCCの実証プラント設備では、2019年4月に最終段階に向けた試験を開始し、高効率な石炭火力発電とCO2分離・回収が両立する技術を確立しました。 さらに、CO2削減に向けた取り組みは電力業界だけではなく、様々な産業で行われています。中でも日本全体のCO2排出量の約13%を占めている鉄鋼業界は、とりわけ大きな問題意識を持って長年CO2削減に取り組んできました。「COURSE50」と呼ばれるNEDOプロジェクトが2008年度から始まり、コークスの一部を水素に代えることで高炉からのCO2排出量を削減させ、さらに高炉から出るガスに含まれるCO2を分離・回収することで、CO2排出削減効果が最大限となることを目指しています。カーボンリサイクルによる イノベーション パリ協定実現に向けたさらなる革新的技術として、排出されたCO2を資源ととらえ、炭素を循環させ鉄鋼業界でもCO2削減の取り組みが盛んに。鉄鉱石還元剤であるコークスの一部を水素に代えるプロジェクト「COURSE50」の試験高炉で検証を推進 提供:日本製鉄 NEDO 40年史 27

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