NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th開発につながりました。バイオマスエネルギーの活用のほか、2002年度開始の「植物の物質生産プロセス制御基盤技術開発」では、トチュウを用いたゴムの生産技術を開発するなど、資源の供給不足や価格高騰といった課題解決に取り組んでいます。 2009年、OECDは報告書「The Bioeconomy to 2030」を発表し、バイオ産業市場はGDP比で2000年代の1%未満から2030年には2.7%(約200兆円規模)に拡大するとの予測を示しました。バイオ分野が成長産業と目される中、NEDOは2009年度から「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発」を開始しています。これは食料と競合しない非可食性バイオマスを利活用して、リグニンやセルロース、ヘミセルロースといった化学品の製造プロセスを開発するものです。当時課題とされていた、世界的な石油消費量の拡大や石油の価格上昇、供給リスク、CO2排出量の増大、地球温暖化などの諸問題に対して、非石油由来原料への転換をはかる試みでした。そして、実用化を加速するために2013年度から「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」を実施し、NEDOは工業分野でのバイオテクノロジー活用という足がかりを確立しています。 このプロジェクトで行われた「セルロースナノファイバー(CNF)一貫製造プロセスと部材化技術開発」は大きな注目を集め、2016年に開催された「G7伊勢志摩サミット」での政府広報展示でもCNFを使った複合材が紹介されるなど、新しい非石油由来 原料として世界から高い関心が寄せられ、その後、CNF複合材を使った製品の実用化が進んでいます。このCNF開発プロジェクトには製紙メーカーが参画しており、製紙メーカーのものづくり進出という、新たな産業構造の可能性も広げています。デジタル技術と融合 サステイナブルなものづくりへ 2015年に採択された「パリ協定」や「持続可能な開発目標(SDGs)」では、地球温暖化対策の実現手法の一つとして、バイオエコノミーが記載されており、持続可能な社会に向けた有効な手段としてグローバルに認識されていきます。日本では、内閣府に設置さ バイオエコノミー生物資源の活用に世界が注目バイオ産業技術の実用化を促進医療用途から 産業技術戦略の柱に 地球上では多様な生物がそれぞれの生命維持活動の中で、互いに有用な物質を生み出す共存関係を保ってきました。「バイオエコノミー」とは、その生物が生み出す資源を最大限に活用し、同時に生態系への負荷を最小化する社会システムのことで、経済協力開発機構(OECD)が提唱した、バイオテクノロジーと経済活動を一体化した概念とされています。このバイオエコノミー実現のため、NEDOはこれまで、バイオテクノロジーにより生物が物質を生み出すプロセスを分子や遺伝子のレベルで解明し、産業プロセスや製品原料、燃料などとして活用することで、環境問題、資源問題の解決、経済発展などに寄与することを目指してきました。 NEDOがバイオテクノロジーを手掛けたのは、工業技術院(当時)からプロジェクトを移管された1988年のことです。当初は、「ヒトゲノム計画」といった国際的な生命科学の進歩に対応したゲノムインフォマティクス技術など、医療系の技術開発が中心でした。グリーンバイオの分野では、1990年に生物によるCO2の固定化を目的とした「細菌・藻類等利用CO2固定化・有用利用研究開発」などが工業技術院から移管され、植物や微生物の機能活用に向けた技術「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」では、CNF強化樹脂の実用化に向けドアトリム(ドアの内張り)の試作などを実施提供:テイ・エス テック28 NEDO 40年史

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