NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 1  Part 1  エネルギー・環境・産業技術の40年と未来へ向けて 社会課題が次々に表面化していく中で、NEDOは新市場の創出を狙うロボット分野として、少子高齢化を想定し、介護・福祉、家事などの生活現場で活用できる「生活支援ロボット」の開発に2009年度から取り組み、人間装着型生活支援ロボットスーツなどの開発を推進しました。また、元々、建設現場や極限状態での作業を目的としてNEDOが開発を推進してきたロボットが東日本大震災で活用され、人が対応困難な場所で活躍するロボットに、社会の関心が高まりました。NEDOも、震災を機にライフラインの維持管理や災害対応の重要性を認識したことで、「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」を開始しました。 2011年8月に閣議決定された「第4期科学技術基本計画」には、国内のみならずグローバル社会の課題解決が科学技術の使命であるという強い決意の下、イノベーションの重要性が記されました。NEDOも震災を契機に、被災地の復興と再生、また国内外の社会課題解決に寄与するべく、役職員一丸となって、より一層プロジェクト成果の社会実装に向けた取り組みを加速していきます。第四次産業革命の到来で 時代の変化をつかむ 2010年代に入ると、コンピューターに限らず様々なモノがインターネットに接続されて相互に情報を交換し制御するIoTの概念が浸透し始め、IoT社会の理し技術をビジネスにつなげていくことが重要視されていきました。 情報通信技術も、1990年代中頃からあらゆる業種・産業との融合が進むなど、急激に進展が加速した分野です。1995年の米Microsoftによる「Windows 95」の発売を経て、2000年代に「IT革命」としてパソコンやインターネット環境が普及し、社会インフラとしての情報通信が浸透し情報社会が拡大しました。さらに、スマートフォンの普及がその後の技術や産業構造を大きく変化させていきます。 NEDOはこうした情報化社会の高度化に対し、基幹技術である半導体集積回路の微細化に関する「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」や、ネットワークの高速化に向けた「フェムト秒テクノロジー」を進めるなど、ハードウエア技術の高付加価値化を図り、激化する国際競争の中、日本の技術力強化に努めました。社会課題に対応し ロボットの活用範囲拡大へ NEDOの産業技術分野の取り組みの中で、社会課題の解決に期待を寄せられたのがロボットです。日本では、1960年代から自動車工場や半導体工場などの大型生産ラインを対象とする産業用ロボット市場が確立し、ロボットはさらに、宇宙などの極限環境や建設現場などの生産現場以外の分野にも活動領域を広げてきました。その中でNEDOは、生活空間などで人と協調しながら働くサービスロボットといった新たなロボット市場を切り開く役割を担っていきます。1998年度に開始した「人間協調・共存型ロボットシステム」としてのヒューマノイドロボットの開発は、この先駆けとして、多くの注目を集めました。 2008年、米国の投資銀行破綻を引き金に世界経済を揺るがしたリーマンショックなど、国内のみならず世界経済に明るい展望が見いだせない中、日本では人口減少が始まり、2010年には日本の名目GDPが世界第2位から第3位へと転落。さらに2011年3月には東日本大震災が発生して、東北地方を中心に広い地域に被害が及び、産業にも大きな打撃を与えるなど、厳しい時代が続きます。東日本大震災の経験などを踏まえつつ日本のロボット技術を活用して開発した災害対応ヒューマノイドロボット NEDO 40年史 33

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