NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th構想が産業の転換も進めていきます。中でも、ドイツ政府が主導する「インダストリー4.0」など、製造業などの産業分野にIoTやAI、ロボットなどの技術を活用する動きが世界的に見られ、第四次産業革命としてグローバルに産業構造の変化が加速していきます。 日本でも、スマートフォンの普及につながる高速大容量通信を実現した第4世代移動通信システム(4G)サービスが開始され、徐々にIoT社会の素地ができていきます。情報通信技術や情報処理技術の高度化が進んだことにより、ITを活用した情報収集とAIによる情報処理が普及し、いかに効率的に情報を収集、蓄積し活用するかという視点が産業の中で重要となっていきました。それまでハードウエア中心に研究開発に取り組んできたNEDOも、次世代の持続可能な新たなビジネスモデル構築に向けて、データの有効活用やそのための情報処理基盤整備を異分野産業間で連携して取り組む「IT 融合による新社会システムの開発・実証プロジェクト」を、社会の動きに先んじて2012年度から開始するなど、これまでと違った観点でプロジェクトを推進していくこととなります。 また、2014年5月にはOECD閣僚理事会において安倍晋三首相(当時)が「ロボットによる『新たな産業革命』を起こす」と表明し、国としてロボット開発の推進に力を入れることが明確となりました。2015 年2月には日本経済再生本部で「ロボット新戦略」が決定され、NEDOのロボット技術開発プロジェクトも活発化していきます。2015年度には、それまでの延長線上に留まらない、革新的なセンサーやアクチュエーターなどのロボットの要素技術や、当時、ロボットを動かす知能として急速に進化したAI技術の開発プロジェクトを開始しました。さらに、それまでロボットの導入が進んでいなかった中小企業への適用を目指した「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」の実施など、ロボットの開発体制を大きく強化しました。「Society 5.0」実現に向け データ活用を加速 2016年1月、「第5期科学技術基本計画」で国は、日本の目指すべき未来社会「Society 5.0」を提唱します。「Society 5.0」とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステム(CPS)により、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会と定義されています。そして「Society 5.0」を構成する各要素技術の開発事業を担う機関として、NEDOの産業技術分野プロジェクトへの期待はさらに大きくなっていきます。 「Society 5.0」の実現に向けて、2017年に経済産 業省が政策として掲げたのが、データに着目した「Connected Industries」です。データを軸に様々な人、物、技術、組織、産業などがつながることにより、新たな付加価値の創出や社会課題の解決をもたら すことを想定しています。こうした方針を受け、NEDOは「Society 5.0」の実現に向けて欠かせないデータの収集、蓄積、分析・解析、制御・サービス、セキュリティを「IoTの5大要素」と位置付け、2016年度に「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」を立ち上げました。 また、企業同士でデータの共有・活用を行うには、情報の安全確保やデータ管理の高度化に向けたルール作りが不可欠です。そこでNEDOは、競争領域と協調領域を明確にした上で、企業の枠を超えてデー棚卸時間の短縮や食品ロス削減に向けて行われた、RFIDによる電子タグを用いた情報共有システムの実証実験人間の代替となるロボット操作の実現に向けて開発された、高精度力触覚技術を搭載する双腕型ロボット34 NEDO 40年史

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