NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40thわば完成形のないソフトウエア技術で、ハードウエア開発以上にスピード感が求められます。NEDOが初めて実施する大規模ソフトウエア開発プロジェクトとして2015年から実施した「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクト以降、開発とテスト、実社会へのリリースを繰り返して機能を拡張していく「アジャイル開発」を取り入れ、プロジェクトを進めながら、途中の段階で技術を市場に出して評価を受け、そこから得られた課題に対してスパイラルアップするマネジメント手法を確立しました。 また、AIを材料開発に応用しようという取り組みも実施しています。2016年度に開始した「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」ではAIを使ったマテリアルズ・インフォマティクス(MI)により、機能性材料の開発期間を1/20にするという大幅な短縮を目指しています。 このようにNEDOのAI技術開発は、言語や文化・常識を理解する汎用的なAIの基盤研究開発と、今ある問題をいかにAIで解決するかという社会実装を強く意識した技術開発の2つの軸で、刻々と変化する時代のニーズを先取りしています。ロボットの社会実装への挑戦 「Society 5.0」では、年齢や障害などによる労働や行動の制約をロボットや自動運転といった技術で克服し、人の可能性を広げることが期待されています。NEDOは「生活支援ロボット」など、既に市場が確立している産業用ロボット以外のロボット市場を創出しようと、様々な可能性を探ってきましたが、2015年以降は三品産業や中小企業など、これまであまりロボットが活用されてこなかった産業分野のニーズや、人手不足に向けた省人化や災害対応・対策、老朽化インフラの点検・監視といった、明確に出口を見据えたロボット開発を進めることで社会実装を加速しようとしてきました。 また、1980年代から培ってきたセンシングや知能化といったロボットの基礎技術を様々な電子機器に展開し、ロボットとして活用する取り組みも進んでいます。その一例がドローン(小型無人機)です。2010年頃にスマホで操縦できる商用ドローンが登場し、個人でドローンを楽しむ人が増えるのと同時に、配送への応用など、産業用途でのドローン活用に期待が高まります。そこでNEDOは、2017年に「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」を開始し、いち早くドローンが空を飛び交う時代に備え、複数のドローンの運航計画や地図情報と連携した運航管理システムの開発、国際標準化などを推進し、2017年には福島県、そして2019年には福島県南相馬市とロボット・ドローンに関する協定を締結して、ロボットの性能評価や実証試験に福島ロボットテストフィールド(RTF)を活用することで、地域の復興にも協力しています。 ロボット技術が成熟し、産業のみならず人の居住空間など、より幅広いシーンでロボットの活躍が期待される中、これまでにない挑戦を生み出そうと、NEDOは経済産業省と共に、競技会という新しいスタイルのオープンイノベーションの場として「World Robot Summit」を主催しています。2018年には、インフラ点検や人とロボットが共に働く店舗を目指すフューチャーコンビニエンスストアチャレンジなどオープンな交流からのイノベーション促進に向け競技大会形式で実施した「World Robot Summit 2018」でのインフラ・災害対応カテゴリーの競技の様子社会実装を強く意識したAIの技術開発の1つ、グループコミュニケーションの研究に向けて公開したデータセット(コーパス)のシーン例36 NEDO 40年史

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