NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 1  Part 1  エネルギー・環境・産業技術の40年と未来へ向けてし、設計技術や接合技術、計測・解析技術、分離回収・廃棄技術など川上から川下まで一緒に取り組むことで、効率的に実用化を目指しています。 材料技術は、グローバル競争で日本がリードし続ける領域でもあり、NEDOは今後も材料分野での研究開発を積極的にリードしていきます。コロナ禍がもたらした 産業技術への期待 2020年、世界中が新型コロナウイルス感染症の拡大に見舞われ、各地で外出禁止や自粛など、前例のない規模で人や物の流れが止まりました。その影響は多岐に渡り、グローバリゼーションによる協業の弱点が明らかとなり、海外からの輸入に頼る資源や材料へのリスクに対応する必要が大きく認識されました。以前から、NEDOは資源リスクの高い希少金属などの材料に対して代替材料を開発する事業に取り組んでおり、現在も「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」などで対応を進めています。 また、必要なものをその場で製造可能な3Dプリンタ技術も、コロナ禍で改めて注目が集まりました。NEDOが進める多品種少量生産やレーザー加工といった技術はリスク低減に役立つと考えられます。 そして何より、感染症対策として非接触での行動に対する要望が高まり、改めてITやIoT、ロボットなど「Society 5.0」に関する技術の重要性が見直され、他方、国内ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れという課題が浮き彫りになりました。DXに必要となる技術は「Society 5.0」の実現はもちろん、NEDOが提唱する「持続可能な社会を実現する3つの社会システム」の持続可能なエネルギーやサーキュラーエコノミー、バイオエコノミーを支える重要な技術でもあります。こうした観点からも、NEDOが展開するDX関連の各種技術開発プロジェクトへの期待がますます高まっています。 国が「グリーン」と「デジタル」という2本柱を掲げる中、今後もNEDOは日本が直面するリスクを含めた様々な状況を考慮し、社会のニーズに機動的に対応しながら、様々な産業技術の開発を進め、その成果の社会実装を加速していきます。9つの競技を行う「World Robot Chal lenge」と、各社のロボットの展示やマッチングなどを行う「World Robot Expo」の2つのイベントを含む「World Robot Summit 2018」を開催しました。 「World Robot Challenge」には欧米各国やアジア、中東など世界中からのべ126チームが集まり、課題解決に向けた熱戦が繰り広げられました。優勝者に賞金を提供する競技大会形式にすることで、参加者による課題解決策が公開され、参加者同士がインスパイアを受け、さらにロボット技術の新たなイノベーションが生まれるといった好循環に、先鞭をつけた形です。加速するイノベーションを 革新材料技術で下支え 「Society 5.0」の実現に向け様々なプロジェクトに取り組む一方で、自動走行やロボットなど、「Society 5.0」への挑戦のみならず、日本の産業全体を下支えするのが、革新的な材料技術です。NEDOはこうした産業のベースとなる技術開発にも意欲的に取り組んでいます。例えば、自動車などのモビリティでは、自動運転や電気自動車(EV)に必要な技術とは別に常に燃費が課題となり、構造材料の軽量化は欠かせません。2014年度からは「革新的新構造材料等研究開発」として、鋼板、アルミニウム材、チタン材などの金属や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などを適材適所で用いることで強度維持と軽量化を両立し、燃費改善に貢献する構造材料の開発を進めています。自動車メーカーと多様な材料メーカーが参加自動車などのモビリティ向けの構造材料の軽量化に向けて、製作に成功した世界初のオール熱可塑性CFRPの自動車用シャシー提供:新構造材料技術研究組合(ISMA) NEDO 40年史 37

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