NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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各務 茂夫氏 (KAGAMI Shigeo)1982年一橋大学商学部卒業。経営学博士。ボストンコンサルティンググループを経て、コーポレイトディレクション(CDI)の設立に参画。東京大学産学協創推進本部 副本部長を兼務。日本ベンチャー学会会長。40th久木田 NEDOは、長年、中小・ベンチャー企業の支援を行ってきましたが、特に2010年以降の10年間、スタートアップへの支援を強化してきました。この10年を振り返り、NEDOが関わってきた事業も含めて、起業環境やスタートアップのビジネス環境で大きく変わったと感じられることはありますでしょうか。各務氏 特に2015年頃から、大企業のスタートアップに対する意識が大きく変わったと感じます。スタートアップが持つエッジの効いたベンチャーマインドやオープンイノベーションの気風を、大企業も内在化しないといけないという意識が芽生えてきました。もう一つ、政府がスタートアップ支援に本腰を入れ始めたのも特筆すべきことです。2015年には「日本ベンチャー大賞」が設立されて、内閣総理大臣自ら受賞企業に対して奨励する姿勢を示されました。また、NEDOが事務局でもある経済産業省がイチ押しの企業を支援する「J-Startup」を2018年にスタートしたことも、大きな動きでした。大学の研究者の中にも、研究成果をなんとか事業化しようという意識が出てきたと感じます。久木田 一方で、米国や中国では時価総額で1兆円を超えるようなユニコーンが100社を超える規模で登場しているのに対し、日本ではまだ数社にすぎず、開業率も低いという現状があります。特に、ディープテック系ベンチャーに対する支援はまだまだ足りないという指摘も頂きます。こうした状況を踏まえて、NEDOが果たしてきた役割をどう評価されますでしょうか。各務氏 米国などと比べてまだまだ支援規模が小さいのは確かなことですが、NEDOが地方大学の隅々にまで目を配り、地域にある優れた研究成果を表舞台に出し、それが呼び水になって地域活性化にもつなげてきたことは評価に値すると思います。メンターやカタライザーの支援の仕組みを作り、地道にノウハウを蓄積してきたことが成果につながっていると思います。もう一つは、実績のあるベンチャーキャピタルにNEDOが認定を与える制度を作ることで、ディープテックを支えるリスクマネーの供給者としてのベンチャーキャピタルを育成してきました。これにより目利き力が高まり、質の高いものが出てくるようになったと同時に、支援対象の幅も大きく広がってきたように思います。最近では、ディープテックの中でも従来はビジネス化が難しかった分野の案件も出てきました。こスタートアップ支援の歩み 世界をリードするスタートアップの育成をViewpoint 各務 茂夫 氏 東京大学大学院工学系研究科 教授久木田 正次NEDO 理事エネルギー・環境・産業技術の40年と未来へ向けて50 NEDO 40年史

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