NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 1  Part 1  エネルギー・環境・産業技術の40年と未来へ向けて回の東京オリンピックが行われた戦後約20年の時と同様に、コロナ禍20年後である2040年頃に、NEDOが支援したスタートアップ企業が日本のイノベーションの担い手として数多く誕生しているビジョンを描くとすれば、今こそスターティングポイントになっているのではないでしょうか。現在のコロナ禍がもたらす変化の中で人の流動性が高まっているのは確かなことです。今は厳しい時期ですが、コロナ禍をむしろチャンスに変え、トンネルを抜けた先に、スタートアップが日本を支えるという光明が見えてくると考えています。久木田 そう仰っていただけると元気が出ますね。そのためにも、日本のスタートアップはもっと成長する必要があります。何か処方箋はありますでしょうか。各務氏 日本は課題先進国といわれますが、今回のコロナ禍でその課題が再定義されたり、増幅されたりしています。このようなプロセスの中で、今後課題解決先進国になれるかどうかが問われています。そして日本で培った課題解決手法をいかにアジア諸国でビジネス展開するかが重要ではないでしょうか。また、非連続のイノベーションを目指す「ムーンショット型研究開発」などのナショナルプロジェクトを、スタートアップ主導でやるのはどうでしょう。ぜひ“世界を変える”という大志を抱いてほしいですね。久木田 ナショナルプロジェクトとスタートアップ支援、ぜひ、さらに充実させていきたいと思います。改めてスタートアップ支援に目を向けると、官民との連携など、まだまだやるべきことは多いと感じています。各務氏 NEDOのこれまでの支援は重要ですので引き続き推進していただきたい。そして、海外市場に挑戦し成長できる環境をもっとつくっていただきたいですね。NEDOの支援を受けたスタートアップ企業が20年経ったとき、時価総額のトップ20社中に10社ぐらいが入っているようなイメージでしょうか。今まで支援した企業の伸びしろを引き出せるかという部分でも、NEDOの役割は大きくなるのではと思っています。久木田 なるほど。これからNEDOは、日本のスタートアップ企業が世界のイノベーションをリードしていけるよう、経営者人材も含めてなお一層支援を推進していきたいと思います。うしたNEDOの役割が、日本のイノベーションを推進するエコシステムのレベルアップに貢献してきたことは間違いないところです。久木田 まさにNEDOは、起業の段階から事業を成長させる段階など、様々な状況に応じた支援制度を作り、推進してきました。今のこの状況で、足りないピースがあるとすれば、それは何でしょうか。各務氏 自社の技術やビジネスをわかりやすく伝えられる経営者人材の不足が、ディープテック系のスタートアップ企業が抱える課題です。コンサルティング会社出身者の流入が進んでいますが、加えて大企業出身者がもっと活躍しやすくなる工夫、兼業や働き方改革を進めることによる大企業にもメリットのあるエコシステムを構築するなど、日本全体としてどう組織だって進めるかが最大の課題のように思います。久木田 ありがとうございます。今のような話も国をあげて取り組み、NEDOもその中で貢献できればと思っています。一方、2020年はコロナ禍などで先の読めない状況となりました。今後のスタートアップのビジネス環境について、どのようにお考えでしょうか。各務氏 日本では先の大戦の前後に今の日本を支える大企業が出てきました。アメリカでも1980年代のベトナム戦争後のある意味一番状況が大変な中、今大きなイノベーションを起こした会社ができています。コロナ禍における今の時代は、戦中戦後の頃と同じような感覚で捉えられるのではないでしょうか。例えば前 NEDO 40年史 51

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