NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th78 NEDO 40年史  日本では長年にわたる取り組みの結果、家庭用燃料電池システム「エネファーム」やFCVの市場導入など、成果が着実に社会実装に結びつつあります。一方、本格的な普及や国際的な競争力の確保のためには絶え間ない技術の向上が不可欠です。そのため、燃料電池については、効率、耐久性、信頼性の向上といった課題の解決に向け、燃料電池内部の現象とメカニズムを根本的に理解し、新規の材料開発に展開することが重要です。これまでの研究開発プロジェクトでは、大気圧下での電極触媒の挙動観測方法や燃料電池の反応生成液水の可視化、電解質膜の耐久性を4倍以上とする触媒技術など、世界初となる技術を開発しました。 新たに展開した水素のエネルギーシステムとしての利活用については、水素を燃料とするガスタービンシステムを開発し、世界で初めて市街地において熱電併給試験を行いました。 将来の大規模水素利用の鍵となる長距離輸送に関しては、メチルシクロヘキサンを水素キャリアとしたサプライチェーンを開始、液化水素についても液化水素運搬船や受入基地が完成し、2020年10月から試験運用を開始しました。 さらに、世界最大級の水電解装置を備えたP2Gシステムを福島県浪江町に設置、再生可能エネルギーを最大限利用し水素を製造・供給する試験を行っています。まずは技術を確立して信頼性を高め、将来的には水素製造や供給コストを大幅に低減するための取り組みを進めています。今後と展望国際的な協創と競争 水素エネルギーへの国際的な期待が高まる中、この動きを確固たるものとすべく、NEDOは経済産業省と「水素閣僚会議」を共催しました。各国の閣僚クラスが参加し、水素のポテンシャルや国際協調の下で進むべき方向性などを議論するもので、2018年10月と2019年9月に開催された際には、「東京宣言」や「グローバル・アクション・アジェンダ」としてその成果が取りまとめられました。 この中で、水素の普及に不可欠な規制・規格・標準の国際的な調和、安全性やサプライチェーンに関する情報共有や共同研究の推進、水素の有するポテンシャルの図3◉ 進水した液化水素運搬船図4◉ 完成した福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)現状と課題基礎・基盤技術から応用技術まで横断的に実施

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