NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  エネルギーシステム分野エネルギーシステム技術 NEDO 40年史 85導入補助金政策の恩恵を受けた中国蓄電池メーカーの技術キャッチアップのスピードは目覚ましく、欧米自動車メーカーからも大型受注を獲得するようになりました。この結果、日本の蓄電池メーカーは車載バッテリー用LIBの生産・販売量を増やしているものの、シェアは徐々に低下しています。また、この傾向は、LIB用材料を手掛ける日本の材料メーカーにも当てはまります。 このように、EV・PHEVは黎明期にあるものの、車載バッテリーは競争激化の一途にあります。そのため、LIBの高性能化・コストダウンの取り組みは今後も続くと予想されます。しかし、性能・コストと相反関係にある安全性・耐久性の確保を考慮すると、有機溶媒電解液を使用した現行LIBの技術改良では、購買ハードルを一気に下げたEV・PHEVを実現するのは困難と考えられます。加えて、LIBに用いるリチウムとコバルトは、採掘地域の偏在と寡占的な供給構造から、EV・PHEVの大量生産時には価格高騰の可能性があるという課題もあります。 このようなことから、EV・PHEV、車載バッテリーは今後、高い確度で市場成長が見込まれるものの、日本の自動車・蓄電池・材料メーカーにとっては、ビジネス面と技術面の両方で現行LIBからの転換期を迎えていると思われます。今後と展望次世代蓄電池目指しオープンイノベーションを推進 NEDOは、オリジナリティーの高い次世代蓄電池を車載バッテリーとして世界に先駆け開発・実用化し、これを搭載した魅力度の高いEV・PHEVを世界市場に投入することにより、日本の産業競争力の向上を目指します。 具体的には、市場投入が2020年代中盤の全固体LIBと2030年前半の革新型蓄電池の二段構えの技術シフトを想定し、これら蓄電池の技術で世界の先手を取り続けながら、堅固な知財網の構築や国際標準化などを計画的・戦略的に進めることにより、国内企業にとってうまみのあるビジネス環境やサプライチェーンの創造にチャレンジします。 次世代蓄電池の実用化に向けて解決すべき課題は数多く、その技術ハードルも非常に高いことも事実です。しかし、日本の産業界・アカデミアは蓄電池開発のパイオニアであり、世界トップの技術力を保有しています。また、蓄電池の材料や製図21◉ EV・PHEVの世界保有台数の推移出典:IEA「Global EV Outlook 2020」

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