NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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Chapter 2  エネルギーシステム分野エネルギーシステム技術 NEDO 40年史 87スマートコミュニティ歴史と背景世界的な広がり見せるスマートコミュニティ スマートコミュニティとは、情報通信技術を活用して電力や熱といったエネルギーを地域単位で統合的に管理するとともに、交通システムなども融合した次世代の社会システムを指します。 スマートコミュニティの基幹となる技術は、太陽光発電(PV:Photovoltaic)などの分散型エネルギーを電力系統に適切に接続するための系統連系技術です。その技術開発は、NEDOが設立した1980年から、太陽光発電システムの研究と同時に始まりました。当時、PVから電力系統に電力を送る際には、通常の電気の流れと逆になる逆潮流であることから多くの技術的課題があり、それらを解決するための技術開発や実証が行われてきました。その後も太陽光発電などの再生可能エネルギーを始めとした分散型エネルギーの普及が世界で進み、多くの分散型エネルギーが系統連系するようになり、そうした状況に対応できるスマートコミュニティが注目されるようになりました。 2000年代に入り、北米や欧州では電力システムの自由化が始まり、近年では再生可能エネルギーの推進政策であった固定価格買取制度(FIT制度)やネットメータリング制度注2)を終了させる国や地域も増えてきました。日本でも、2016年に電力小売りの全面自由化がスタートし、2020年には電力会社の発送電分離が、また今後は電気料金規制の完全撤廃が計画されており、自由化が進みつつあります。このように、スマートコミュニティの基幹となるエネルギー分野で大きな変革が世界レベルで進んでおり、それとともに新しいビジネスモデルが模索されるようになりました。 一方、世界的に脱炭素化の取り組みが進む中、日本では2018年に策定された「第5次エネルギー基本計画」で2030年度に再生可能エネルギーの比率を22~24%電力系統と地域のエネルギーシステムの協調運転電気と熱の総合的マネジメントによる効率向上充電インフラ整備による電気自動車の利便性向上ITの活用によるエネルギー利用の合理化新エネルギー有効活用などのための家庭内蓄電池利用スマートメーターによる消費電力の見える化、デマンドコントロールエネルギー利用合理化と信頼性向上のためのコミュニティ内蓄電池利用全体最適化と個別の利用状況を把握するための地域EMSエネルギーマネジメントシステム太陽光発電/風力発電太陽光発電バイオガスコジェネコジェネ廃熱次世代自動車次世代SSスマートハウスZEB太陽光発電上位系統風力発電NaS電池蓄電池蓄電池図24◉ スマートコミュニティ概念図出典:経済産業省「次世代エネルギー・社会システム協議会」資料を基にNEDO編集注2)米国における家庭向けなどの太陽光発電システムの余剰電力を買い取る制度。発電量から電力消費量を差し引いて余剰電力量が発生した場合、余剰分を次の月に繰り越して、消費量を発電量で「相殺」する仕組み

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