NEDO40年史 イノベーションで未来をつくる
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40th88 NEDO 40年史 とする目標が掲げられ、再生可能エネルギーの「主力電源化」を目指す取り組みが示されました。こうして日本でも今後再生可能エネルギーの大量導入が進むこととなり、系統連系の課題はますます深刻化し、電力需給に大きな変動が見込まれる中、それに備える技術開発と新たな電力ビジネスが求められています。 そこで、強く要請されているのが、エネルギーの安定確保と地球温暖化防止、経済成長を同時に実現する持続可能な社会の構築です。それを実現する鍵として、期待されているのが系統連系技術を中心とするスマートコミュニティであり、世界各国でそれに関する活発な取り組みが行われています。 最近10年の主なプロジェクト >> 実証❖ 独国ニーダーザクセン州における大規模ハイブリッド蓄電池システム実証事業 [ 2016〜2019年度 ] ドイツは、2050年までに国内電力需要の80%以上を再生可能エネルギーに代替するエネルギー転換政策(エネルギーヴェンデ)を掲げており、火力発電の役割を代替する再生可能エネルギー技術へのニーズが急速に高まっています。また、ドイツでは1998年に電力市場が全面自由化され、需給調整市場注3)で調整力を取引するビジネスが活発化しています。こうした中、NEDOはニーダーザクセン州政府、同州の電力取引管理組織であるEWE-VerbandおよびEEW Holdingと合意書を締結し、リチウムイオン電池とナトリウム硫黄電池の2種類の系統用蓄電池と系統情報制御システムを用いて、需給調整市場の中でも瞬時の調整力の提供が求められる一次調整力や二次調整力の電力取引、バランシング・グループへのバランシング供給、ローカルな電圧安定化に寄与する無効電力供給の実証を実施しました。❖ ハワイにおける日米共同世界最先端の離島型スマートグリッド実証事業 [ 2011〜2016年度 ] 2045年までに再生可能エネルギーによる電力供給100%の目標を掲げているハワイでは、2013年頃から太陽光発電の導入拡大に伴ってダックカーブ注4)問題が顕在化してきました。電気自動車(EV)の普及拡大に伴い、電力需要のピーク時に多数のEV充電が重なりこの問題が深刻化することが懸念されていました。この解決のため、NEDOはハワイ州政府及びマウイ郡政府と合意書を締結し、マウイ島で200世帯以上のEV利用者の協力を得て、デマンドレスポンスやバーチャルパワープラント、V2G(Vehicle to Grid)注5)などの実証を実施しました。これは、世界で初めてEVを大規模に活用して電力システムを安定化させる試みでした。 本実証事業は、EVによるV2G実証として世界的に注目されるとともに、実証事業に参加した日本企業が、英国やオランダでスマートコミュニティ実証を実施することにつながっています。 最近10年の主なプロジェクト >> 系統連系❖ 次世代洋上直流送電システム開発事業 [ 2015〜2019年度 ] 陸上風力のポテンシャルが限定的な日本において、洋上風力は再生可能エネルギー拡大の鍵となります。しかし、大規模な洋上風力発電を設置する場合、沿岸部注3)欧米など電力システムの自由化のうち、発送電分離が進んでいる国や地域で、系統運用者が系統網を安定して維持するために運用している市場で、アンシラリーサービス市場とも呼ばれる。調整力を入札により調達する注4)太陽光発電システムを多く導入している米国のカリフォルニア州やハワイ州において、日中は太陽光発電で電力消費を賄うため実質電力需要が少なくなり、電力需要のピークを迎える17時以降に実質電力需要が急増する現象。1日の実質電力需要の推移を表すグラフが、アヒルのような形を描くことから「ダックカーブ」と呼ばれる注5)電気自動車に搭載している蓄電池を電力系統に連系し、系統網との間で電力融通を行って電力市場に参加し、電力系統の不安定化を解消する手法大規模ハイブリッド蓄電池システムを使った需給調整市場への参加を検証図25◉ ドイツ・ニーダーザクセン州における実証サイト急速充電ステーションと電気自動車を搭載し、V2Gなどの実証を実施図26◉ 米国ハワイ州の実証サイト

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