NEDO_人と共に進化する
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 計算機に知的な能力を持たせるAI技術は、従来の情報処理の枠組みを大きく変貌させ、医療・介護・健康から製造業、創薬、金融など、これまでの産業、科学技術研究、社会の在り方を大きく変貌させている。AI技術は、DXが単なるデジタル化にとどまらず、大きな社会変革(トランスフォーメーション)に至る必須の技術となっている。  その一方で、AIの社会実装の過程で、AIと人間の知能がかなり異質なものであるとの認識も広がっている。AIが人間を置き換えるのではなく、2つの相補的な知能をいかに組み合わせて課題解決を行うかが重要となっている。  共進化のプロジェクトは、この「2つの知能が共同する」チームアップの枠組み、これをさらに一歩進めて、「お互いの知能をスパイラル的に高める」枠組みを目指す。  チームアップの枠組みでは、2つの知能体の相互理解とコミュニケーションが課題となる。これは、説明能力を持つAI(Explainable AI:XAI)やAIのホワイトボックス化、HCI(Human-Computer Interaction)の研究として取り組まれてきたことを、より広い技術の体系にまとめていくことになる。  専門家(人間)が対象分野に関して持つ知識や経験は、これまで、教師データの構築という狭いチャネルを通してAIに伝えられていた。このチャネルを広げて、人間のもつ豊かな知識を系統的にAIシステムに埋め込む方法論の構築も、共進化AIの課題である。  その一方で、人間の専門家や熟練者が持つ非明示的な知識をAIにより顕在化させ、それを新たな知識の発見につなげたり、教育に反映したりすることにより、人間の側の知的能力を高めていくことも、共進化AIの目指すものである。  もとより、人間とAIの共進化はオープンエンドな野心的な課題であり、一朝一夕に実現するものではない。様々な試みを続けていくなかで、その在り様が明らかになってくる。このパンフレットで紹介される研究が、その第一歩となることを期待している。 AIあるいは人工知能という言葉が今や日常的に使われ、多くのシステムやサービスにおいてAIの活用がうたわれています。みなさんはAIや人工知能と聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。「生活を豊かにしてくれる技術」と思う方もいる一方で、「不安」や「怖い」と感じる方も多いのではないでしょうか。 政府は「AI戦略2022」の中で「高品質で信頼性が高く安心・安全なAIによる競争力強化」を方針として掲げています。その取り組みの一つとして新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業(共進化PJ)を立ち上げました。 共進化PJはAI・人工知能を得たいの知れない他人から内面まで理解し信頼し合える「友」に近づけようとするプロジェクトです。共進化PJでは次の3課題を研究開発項目として設定しています。 (1) 人と共に進化するAIシステムの基盤技術開発(説明できるAI、人の意図や知識を理解して学習するAI) (2) 実世界で信頼できるAIの評価・管理手法の確立 (3) 容易に構築・導入できるAIの開発 これらの項目に対して研究開発テーマを設定するとともに各テーマを相互に連携させ共有していきます。 それによりAI戦略2022の目標の一つである「責任あるAI」の実現を目指しています。 本パンフレットではプロジェクト内の研究開発テーマの概要や社会イメージを紹介します。その上で想定される連携・協業先を示しています。みなさまのお持ちの技術や課題等とマッチすることがあれば、本プロジェクトとの連携で新たな価値を創出したいと希望しています。ぜひ、ご検討いただければ幸いです。1人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業産業技術総合研究所 フェロー / 人工知能研究センター長 ■井 潤一プロジェクトマネージャーのコメント NEDO ロボット・AI部 主査 芝田 兆史プロジェクトリーダーからの期待 〜共進化プロジェクトが目指すものはじめに

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