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レアアース使用量を半減する高出力密度モーターを開発

―電気自動車の性能、飛躍的に向上へ―
2010年3月25日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人 名古屋工業大学
NEDOの次世代自動車向け蓄電池開発プロジェクトの一環として名古屋工業大学 小坂卓准教授らは、レアアース半減を可能にするモーターを試作し、性能を確認するに十分な試運転に成功しました。現在、次世代自動車用モーターは他国からの輸出に頼るレアアースを用いたモーターが主流ですが、この成果により、近年世界的な競争が激しくなっている次世代自動車の開発において、他国の資源に依存しないことで日本の競争力を維持し、ひいては環境問題の解決に貢献することが期待されます。

図1. ハイブリッド界磁モータの構造
図1. ハイブリッド界磁モータの構造

図2. 1/3スケール相似形ハイブリッド界磁モータの試作機部品写真
図2. 1/3スケール相似形ハイブリッド界磁モータの試作機部品写真

1.背景

 次世代自動車用モーターの開発はリチウムイオン電池をはじめとする次世代電池と並び、重要な要素技術として注目を集めています。
 従来のハイブリッド自動車に搭載されているモーターには、レアアースを用いたIPMSM(※1)が使われています。しかし、レアアースは中国からの輸出が9割を占めるなど資源が偏在している上に、需要の増大により価格が2~3倍に上がりつつあります。そのためNEDOではレアアースの使用量低減のために「新方式モーターの開発」と「永久磁石材料の開発(※2)」という相互補完関係にある二つのアプローチを推進しております。
 新方式モーターとして期待されるハイブリッド界磁モーター(※3)は従来のモーターに比べレアアースを半減することができる可能性があり、IPMSMに替わるモータ候補として世界的に研究されていますが、坂道発進などの低速大トルク時の性能は得られるものの、高速道路巡航時など高速低トルク時の効率に課題がありました。

2.成果の特徴

 名古屋工業大学の小坂卓准教授らは、現行市販のハイブリッド自動車に搭載されたモーターと比較して、レアアースを用いた永久磁石の使用量を50%に抑えたモーターとしては、同一体格で同一出力密度(最大出力123Kw、出力密度3.4Kw/kg)という世界最高水準の高出力密度を有するハイブリッド界磁モーターの開発に成功しました。
 ハイブリッド界磁モーターにおける永久磁石と電磁石を効果的に協調作用させるため、SMC(※4)コアと呼ばれる鉄粉を圧縮成形および熱処理製造した磁心を使用することにより、従来モーターには無い新たな3次元磁気回路モーター構造を提案し、3D-FEM(3次元有限要素磁場解析)を用いたコンピュータ援用設計と試作機により確認しました。
 最適化した3次元磁気回路モーター構造により、レアアースを用いた永久磁石の減量に伴う磁力の減量を電磁石による磁力で補うことで坂道発進などの低速大トルク性能を実現しました。また、モーターの高速回転時に生じる鉄損を低減するため磁石の磁束を微量な電磁石の電流の向きを制御することで打ち消して、高速道路巡航時のような高速軽負荷時の高効率化も合わせて実現しました。 3次元磁気回路の最適化設計は、SMCコアを使用することによって実現されました。
 SMCはこれまでモーターコア部材にはほとんど使用されていませんでしたが、粉末を成形することから加工成形性に優れており、複雑な形状でも成形が可能であり、従来の積層鉄心では不可能な3次元的な磁気回路が容易に製造可能となりました。
 なお、この成果のさらなる詳細については、電気学会主催の国際会議IPEC Sapporo,日本能率協会主催のモータ技術シンポジウムにおいて発表される予定です。

3.お問い合わせ先

(本プレス発表の内容についての問い合わせ先)
NEDO  燃料電池・水素技術開発部
宍戸、丸山
TEL 044-520-5264

名古屋工業大学 工学研究科 おもひ領域
小坂
TEL:052-735-5420

(プレス発表/取材に関する問い合せ先)
NEDO  広報室
萬木(ゆるぎ)、田窪
TEL  044-520-5151


(参考)用語の解説

  • 1. IPMSM:ロータの内部に永久磁石を埋め込んだ構造を持つ回転界磁形式の同期モーター。高トルク運転や広範囲な速度での運転が可能であり、省エネルギー、高効率、高トルクモーターとなっている。電気自動車、ハイブリッド自動車、高性能エアコン等で近年その利用が急速に拡大している。
  • 2.希少金属代替材料開発プロジェクトで実施中。
  • 3.ハイブリッド界磁モーター:永久磁石と電磁石を協調作用させることで磁力を制御するモーター。
  • 4.SMC:軟磁性複合粉材(Soft Magnetic Composites)。鉄粉など磁性を持つ粒子の表面を絶縁被覆処理したもの。三次元的に複雑な構造を持つ磁性部品を低コストで量産・成形することが出来る。