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豊富な天然資源、もみ殻を使った安全・高機能な活性炭【産技助成Vol.25】

-灯油中の残留硫黄化合物などを効率的に除去-
2008年8月28日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
秋田県立大学 システム科学技術学部
【新規発表事項】
  秋田県立大学システム科学技術学部(秋田県由利本荘市)の熊谷誠治助教は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)のもと、もみ殻に由来する高機能活性炭の開発に成功しました。
  開発した高機能活性炭は、今まで除去の難しかった燃料油中の硫黄化合物を効率的に除去できます。環境対策の面から普及が期待されている灯油を用いた家庭用燃料電池の場合、ppbレベル迄、灯油中の硫黄分を下げる必要が有ります。今回の開発により、灯油中の硫黄をppbレベル迄低コストで除去するというブレークスルーが見込まれます。この開発は、株式会社ジャパンエナジーと産学連携で実現しました。
  これ以外にも、軽油の低硫黄化による自動車排出ガスのクリーン化や、自然由来の安全性の高い吸着剤として、食品や医薬品の精製過程での色素や臭気源等不純物の除去など、様々な用途への展開が可能になります。

図1.製造されたもみ殻由来活性炭加圧または射出成形で様々な形状が可能
図1.製造されたもみ殻由来活性炭
加圧または射出成形で様々な形状が可能

  1. 背景及び研究概要
      稲作地域では毎年米の収穫に伴い多量のもみ殻が発生します。かつては野焼きにより大部分土壌に返還することができたもみ殻も、大気汚染の原因として野焼きが多くの地域で行われなくなった今日では、処分に困る状態です。又、一方で、食糧資源と競合しないバイオマス資源の利用促進は社会的な課題であります。
      気体液体を問わず精製浄化等に使用される活性炭の消費量が世界的に増大しています。今回、秋田県立大学システム科学技術学部は、株式会社ジャパンエナジーと共同で、もみ殻に天然に含有されるシリカを細孔骨格とし、安全性の高い糖類を細孔発達および成形性向上に利用することにより、これまで除去の難しかった不純物を、安全かつ効率的に除去できる活性炭を開発しました。(図1)
      燃料油中に残留する硫黄化合物の吸着除去の用途以外にも、食品や医薬品の精製過程における色素や臭気源除去への応用が見込まれます。高い安全性を要する食品や医薬品の用途では、植物由来のヤシ殻系活性炭など、使用される種類が限定されていました。開発された活性炭は、既存の活性炭で除去の難しい不純物、例えば、分子量の大きいフミン質(注1)などを効率的に除去できるものです。

    (注1) 植物などが微生物によって分解されるときの最終分解生成物。殺菌・消毒処理に添加した塩素と化学反応し、有害物質やアルデヒド等を生成するフミン酸などがこの中に含まれる。
  2. 訴求点・競合技術への強み
    新たに開発した「もみ殻由来の活性炭」の特徴は以下の通りです。
    1. 図2はもみ殻由来活性炭中に存在する細孔の幅とその細孔が有する容積の関係を示すものです。幅2~50nmのメソ孔の容積が、ヤシ殻系活性炭と比べて2~4倍大きくなります。これにより、分子量が大きく、幅2nm未満のマイクロ孔を主体とするヤシ殻系活性炭では除去の難しかったフミン質などの不純物を効率的に除去することができます。
    2. メソ孔が多いと通常活性炭の充てん密度は低下しますが、ヤシ殻系活性炭と同等以上の充てん密度(粒状で約0.5 g/cm3)を実現します。また、図1に示したように高い成形自由度も有します。
    3. もみ殻を主原料として、上述レベルの充てん密度と細孔特性を有する活性炭を製造したのは、世界で初めてです。
    4. 植物由来のもみ殻と糖類から製造しており、高い安全性を有します。
      図2.もみ殻由来活性炭の細孔特性メソ孔が従来技術のヤシ殻系活性炭より発達
      図2.もみ殻由来活性炭の細孔特性
      メソ孔が従来技術のヤシ殻系活性炭より発達

    表1.活性炭に係る従来・競合技術と本研究技術との比較
      安全性
    環境性
    吸着性能 成形性 充てん密度 コスト
    もみ殻由来活性炭
    本研究技術

    国内の農作物残さが原料

    マイクロ孔とメソ孔で吸着できる広範な物質を対象、高いメソ孔容積比率と中程度の吸着速度

    加圧または射出で様々な形状可能

    1-3mm の粒状で 0.5g/cm3

    千円/kg
    (予定)
    繊維状活性炭
    市販品、従来技術
    ×
    化石資源由来

    マイクロ孔で吸着できる物質を対象、大きなマイクロ孔容積に起因する高い吸着容量と高吸着速度
    ×
    基本的に綿状

    綿状で 0.2g/cm3
    ×
    数万円/kg
    ヤシ殻系活性炭市販品
    従来技術

    海外の農作物残さが原料

    マイクロ孔で吸着できる物質を対象、吸着速度は低い

    破砕段階である程度の成形可能

    1-3 mm の粒状で 0.5g/cm3

    千円/kg
  3. 今後の展望
      製造プロセスを簡略化しながら、活性炭としての機能を向上させます。また、実用化研究への展開および多くの精製や浄化プロセスへの応用を視野に入れ、量産化に関する研究を行います。
     
  4. 問い合わせ先
    (1) 技術内容について
    秋田県立大学 システム科学技術学部 機械知能システム学科 助教 熊谷誠治
    TEL:0184-27-2128   FAX:0184-27-2128
    E-mail:E-mail:kumagai@akita-pu.ac.jp
    研究紹介HP:秋田県立大学 熊谷誠治 助教
       
    (2) 制度内容について
    NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
    坂橋 信俊、日高 博和、千田 和也
    TEL:044-520-5174    FAX:044-520-5178
    個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)
  5. 参考
    技術提案資料
    詳細説明資料【PDF:400KB】