本文へジャンプ

油圧ドライブトレインを採用した世界初の大型風車を実用化
―世界最大級7MWの超大型風力発電設備実現へ―

2013年1月24日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援により、三菱重工業株式会社は新型の洋上風車として、世界初となるデジタル制御の油圧ドライブトレインを採用した大型風力発電設備を開発いたしました。
 風車の大型化は世界的に開発が進められていますが、従来方式では増速機や周辺機器等の信頼性が課題となっており、これらを解決する本方式の実用化は、風車の大型化に向けて大きな一歩となります。
 NEDOはこの成果を踏まえ、7MW級の新型洋上風力発電設備の開発についても実施する予定であり、NEDOが風力発電事業を実施する国内2拠点(銚子、北九州)の成果を合わせることで、再生可能エネルギーの導入普及の観点のみならず、経済成長や雇用創出等の点からも、大きな効果が期待されます。

写真
開発した油圧ドライブトレインを採用した大型風車 (写真左:ナセル部分  写真右:完成した風車)
  • 概略図
    油圧ドライブトレインを採用した風車の概略図

1.概要

 NEDOは昨年9月より「超大型風力発電システム技術研究開発」として、洋上風力市場のニーズが高い、海外企業が未だ実現していない7MWクラスの風車を実現するために、コスト競争力の高い、革新的なドライブトレイン、長翼ブレード、及びメンテナンス性を向上させる遠隔監視技術(コンディショニングシステムなど)を持った風車の開発を推進し、こうした市場ニーズに対応する革新的な超大型風力発電システムに係る技術開発を行う事業者として三菱重工業に対して、その開発に必要な事業費の一部を助成しています。
 本事業の一環としてNEDOと三菱重工業は12月から、横浜製作所(横浜市金沢区)内で、これまでのギアドライブに代えて油圧ドライブトレイン※1を採用した大型風力発電設備の試験運転を開始します。デジタル制御の油圧ドライブトレインを持つ大型風力発電設備の運転では世界で初めてとなります。

2.今回の成果

 今回運転を開始するのは、横浜製作所内で運転中のギア式風力発電設備(MWT102/2.4MW)のナセル部分のみ新型油圧ドライブトレインに換装したもの(MWT100H)です。具体的には、ブレードの回転速度(10rpm)を発電機の回転速度(1000rpm)に増速する動力伝達機構として、これまでの(ギア式)増速機に代えてデジタル制御方式による油圧ドライブトレインを採用した画期的な機構です。
 新型油圧ドライブトレインについては、三菱重工が2010年に買収した英国のベンチャー企業、アルテミス社(Artemis Intelligent Power, Ltd.)の持つ優れた油圧デジタル制御技術をベースに、共同で開発しました。
 油圧ドライブトレインを採用した風力発電設備は、大型化のネックとなっていた増速機やインバータが不要で、高い効率性と信頼性を実現します。また汎用性の高い油圧機器や材料、比較的低廉な同期発電機などで構成されるため、コスト競争力に優れるなど、数々の利点を持ちます。

3.今後の予定

 NEDOと三菱重工業はこの成果を踏まえ、7,000kW級の新型洋上風力発電設備の開発を加速、本年中に英国において陸上実証機の据付・運転を開始する計画であり、新型洋上風車量産機の2015年市場投入を目指していきます。

超大型風車 開発スケジュール

  • 予定表

お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:伊藤、山崎 TEL 044-520-5273
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 担当:遠藤  TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【参考:用語解説】

※1 油圧ドライブトレイン
ローター軸と発電機軸が繋がっておらず、風車の回転力が油圧に変換され、その油圧によって発電機軸を高速回転させる動力伝達機構のこと。

関連ページ